内容説明
結婚詐欺にあっても、心からは女を憎めず、怒れず、それどころか女の勝手気儘な大らかさを羨望する「浮舟寺」の稲次郎。燃えるような恋の道行には、なりうるはずもなく、何やら佗しいがほのぼのとしたアバンチュールに終わる「中年」の妻子もちの有川とハイミスの私の一泊旅行。――酸いも甘いも知りつくした中年男と女の、あいまい模糊とした愛情のありようを、上方芸人の世界や関西の商家を舞台に自由奔放なタッチで描く好短篇集。
感想・レビュー
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キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
23
短編集。不思議な押しかけ女房やうまくいかない夫婦などの話の他に、大阪の落語漫才の世界の話。大阪の芸の世界を大正から戦後までを、三味線を弾く女から見たもの。吉本らしき会社も出てきて、芸に生活も命も全部入れ込む芸人達、すごい。お金を溜め込む事や女に手を出す夫を責めるのは、野暮だった芸人の妻達。自分だったらつとまらん、と思ったが、ふーんなるほどね、とは思った。2019/07/04
Kento Isikumada
5
この人も外さんなぁ。宮部みゆきとか宮島輝が好きな人は好きかと。何年も連れ添った夫婦や中年の恋。お互いが混ざり合うようなお話。恋、というより情に近いかも。2014/09/11