内容説明
「コンツワ!」とそいつはいきなり、ぼくの背後から声をかけた。横浜の港が見える丘の上に、ひょっこり姿をあらわした、奇妙な日本語を喋る男。頭に古風な山高帽、モーニングの上着に小倉のはかまといういでたちで、名前をゴエモンと名乗った。その直後、日本全土からあらゆる音が消えてしまった――。ゴエモンとは何者なのか? ゴエモンを利用して世界を動かそうと企む人間達の思惑が絡み合い、事態は思わぬ方向へと転がり始める。極上の笑いとSFだけが描き得る真の恐ろしさが同居する、異色の傑作長編!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
山口透析鉄
23
この辺の角川文庫も高校時代に概ね読みました。半分以上は古書店で買ったでしょうか? この作品、左京氏の文明批評的な側面が非常にはっきり出ていて、こういう作品、本当はもっと書いて欲しかったくらいです。 ただ、現実の重み云々や、吹っ切らないと、といった発言からすると、左京氏、こういう文明批評からは途中で逃げてしまったような気も致します。 ただ解答が容易に出るはずもない難問なので、今でもこの作品の本質は古びていないとは思います……。
新天地
6
文庫化が昭和48年なのでさすがに時事ネタは通じないものがあるがその本質は古びない。人類と文明と何より日本という国とそこに住まう日本人への風刺と批評に富んだ多くの問を投げかけた問題作。今も昔も国際社会は国と国のエゴがぶつかり合い、その中で日本は右往左往するばかり。また、人々の文化や知性や道徳は昔から見て果たして前進したのか後退したのか。小松作品はいつも日本人であることを問いかける。タイトルの意味が分かった時にさらなる問いかけが待っているが自分には答えが出せないままでいる。2019/10/13
洪七公
3
読了1982/06/02
hibimoriSitaro
3
もし○○が××になったら社会はどうなるのかという,小松さんにはお馴染みの手法で,ドタバタ寄り。翻訳SFの「トリガー」(2001年)を思いだしたがまるっきり逆でしたね。2015/08/01
San fairy Ann
3
タイトルとポップな表紙絵からジュブナイルSFかと思ったら、まったくもって例に漏れず小松左京の深い政治的洞察に支えられた本格派のニッポン社会SFだった もし、世界の火薬が一切機能しなくなったら 日米安保の問題点と、ゴエモンを通じたその先の問題への想像力に刮目せよ2011/09/18