内容説明
内戦の末に賊軍の汚名を着せられ、上洛に唯一の活路を見出した天狗党の千余名は、愛すべき水戸の町を後に、京へ向かって苦難に満ちた大行軍を開始した。執拗な追手の攻撃、行く手を阻む厳寒の山河、続出する怪我人や病人。「京へ行けば逆賊の汚名を晴らせる」一途にそう信じて進む彼らの前に、絶望的な道程が待ち受けていた……。幕末に起きた天狗党の悲劇の顛末を、全編一人称の語りで描いた著者入魂の力作長編!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
李孟鑑
5
賊軍の汚名を晴らすべく京への上洛を決行した、水戸天狗党の悲劇を描いた歴史小説です。指先の切れそうな緊張感が素晴らしい。賊軍である天狗党の通過によって諸藩に起きる悲喜劇の歴史ドラマそのものも、もちろん面白いのですが、全編に細い糸のように張りつめた緊迫の空気が、作品を非常に読み応えのあるものにしていると思います。穿ち過ぎかもしれませんが、作者にこの作品を書かせたものは、歴史的好奇心などよりも、天狗党に対する哀惜の念ではなかったかと感じました。(コメ欄へ続く→)2018/12/25
北白川にゃんこ
3
日本の長征といったところか。熱い情熱はあった。しかしそれは見当違いの狂奔となり全ては消えていったのだ。悲しいなあ(諸行無常)2020/09/19
seichan
3
あまりにも無惨。天狗党の乱についてはよく知らなかったが、一気に引き込まれて読んだ。風太郎は天狗党の行軍を毛沢東の長征にたとえたと聞くが、滑稽と悲惨と理不尽と酸鼻の様子が、太平洋戦争の悲劇の二重写しと感じざるをえない。この人の描く少年少女の可憐純情とそれが人の世の業にまみれゆく酷たらしさの様はいつも凄絶だが、作者の青春を想うとたとえようもない悲痛さをより強く感じてしまう。「明治最後の仇討ちではなく、最後の復讐ごっこではなく、哀切な心中」という鎮魂の祈りに満ちたパセティックな結びが、深い余韻をのこした。2012/04/06
しい太
1
天狗党の乱の西上進撃部分にフォーカスした物語。天狗党は聞いたことあるけど具体的にどこで何があったのか出てこない、という自分には乱の前半部をダイジェストで説明してくれるのもたいへん助かった。最終的に投降した天狗党の大半を斬首した幕軍、それを恨んで徹底的に復讐に走る生き残りの酸鼻を極める展開は歴史的には不毛なだけに何とも物悲しい。山風が時々本文に顔を出して実際に天狗党の道程を追ってみた感想を述べているところがちょっとしたオアシス。2021/03/19
Ozymandias
0
面白い。時代に翻弄された若者たちの哀切と愛憎を描いた名作。忍法帖とはまた違う山田風太郎の魅力を感じた。2016/03/15
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