内容説明
1942年6月、第2次大戦の北アフリカ戦線。そこは“砂漠に戦車”というかつて考えられなかった発想で独英の戦車隊が灼熱の砂の上で対峙していた。ドイツ軍の指揮をとる将軍ロンメルは、不敗の神話を背負う国民的英雄であったが、若き犠牲者を悼む心の持主でもあった。ソ連戦線を重視する統合本部に苦言を呈し、やがてヒットラーからもうとんじられる将軍の壮烈な半生を描く長編出世作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
future4227
20
ナチス・ドイツの元帥らしからぬ紳士的な人格者。ドイツの将軍だったのが残念なぐらいだ。前半の北アフリカ戦線を舞台とした機甲師団の戦車バトルは見もの。迫力のある戦闘シーンで映像が目に浮かぶようだ。後半はトムクルーズ主演の映画『ワルキューレ』で描かれたシュタウフェンベルク大佐によるヒトラー暗殺未遂事件も挿入され、サスペンスタッチの緊迫感がロンメル将軍だけを描く単調さを防ぎ、作品の中に絶妙な変調を施している。とりわけラストのロンメル元帥はかっこいい。 2016/03/22
ヴァン
7
著者・岡本好古は文章が巧い。砂漠で闘われる戦車戦の描写、人物の素描、などを小説の進行を停滞させることなく、的確に言葉を選んで展開していく。北アフリカの熾烈な闘いが映画の画面のようにパノラミックに表現される。沈着冷静なロンメルその人の活躍がやがてはヒトラーにうとんじられ、最後には悲しい結末を迎えるまでの物語である。2018/01/16
おぎにゃん
4
ロンメル将軍…英米の将兵の誰もが、彼を司令官として闘うことのできる独軍将兵を羨んだであろう砂漠の英雄。そして、血なまぐさい砂漠の戦場を疾駆するパンツェル戦車の美しいさ…ラストの最新鋭ケニヒスティゲル戦車上で、自らの死を宣告に訪れた使者に元帥杖をもって敬礼するロンメルの姿には泣きそうになった。久しぶりに血湧き肉踊る読書体験だった。2013/11/07
きいち
2
中学生の時に読んだ本を再読。この時の親しい友人がナチにはまっていたなあ。このあとアドルフに告ぐにいって、ああ、手塚のポリフォニーはすごいなあ、とはまるきっかけになった。2011/05/06
古隅田川
1
第二次大戦中の北アフリカ戦線についての知識がほとんどなかったため、熱砂の中の独英の戦車戦の描写は強烈だった。ロンメル将軍の悲運には同情を禁じ得ない。 本書のテーマとは無縁かも知れないが、「ドイツにとって、北アフリカ戦線は必要だったのだろうか」「ドイツもまたアメリカの物量の前に敗れたのか」という疑問と感想が湧いた。 著者はなぜ、ドイツの歴史を取り上げたのだろう。同様に連合国に完敗した日本と比較するためだろうか、それともロンメル将軍への思いだろうか。著者に聞かない限り正解は分からないが、私は両方だと推測する。2021/12/25