内容説明
世界中で自分だけが幸せでありたいと願う香也子、他人の愛を壊すことが楽しいゲームですらある香也子の熾烈な嫉妬心にもろくも崩れてゆく愛の数々……。北都旭川の残照にあざやかに浮かびあがる美貌の姉妹の愛のかたちと、人間の信頼を、痛烈なエゴイズムを描きながら謳いあげる長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ach¡
40
三浦文学の中でもトップクラスのえげつなさを誇る性悪こじらせ女子が主人公。環境が彼女を腐らせたのか天分なのか…負の感情だけを煮詰めてゴリゴリに焦げ付かせた腹心を露出狂よろしくさらけ出し、さもありなんと他者の幸福を壊しまくる。彼女に巻き込まれる人々を含め、皮フを裏返すように曝される醜い人間の本質に辟易するも、これは己が内包する恥部を露呈される不快感であると気づく。そして執拗に悪意を振りかざす主人公に読者は何かしら制裁が下ることを願って読み進めるのではないか…それこそ人間の業の暗さであると慄く。綾子サマ容赦ない2017/02/01
佐島楓
23
他人の幸せを決して認めない美少女・香也子。彼女のとてつもない破壊力を軸に、物語は進展する。登場人物それぞれがそれぞれに自己中心的で、嫌悪感を抱かせる。それでも目が離せないのは、この人たちと自分も同じ人間なのだ・・・という気持ちがどこかにあるからだろうか。人間の本質を拾い上げ、手に取って見せられたような、凄まじい小説だった。2014/03/20
駒
6
めちゃくちゃ面白い。でも埋もれてないか?勿体ない!香也子は身近にいたら最悪だけど、小説の登場人物としては大好き。しかし最初はいけいけと思ってたけど、段々と気の毒に思えてきた。自分より幸せな人間は許せない。そう思ってるままじゃ幸せにはなれないよ。三浦綾子さんハマりそう。もっと読んでいきたい。2023/06/16
ぼちぼちいこか
5
勧善懲悪がハッキリして読みやすい内容。ズルズルの人間関係だが、北海道の自然が融和して読後は割とすがすがしい。名香智子の漫画の中で「幸せの分母が大きい人は幸せがいくつあっても満たされない」という言葉があった。まさにその通りだと思う。足るを知ること、自分も好きな言葉だ。2017/01/16
バーベナ
5
愛を信じない香也子の楽しみは『人の仲を引き裂く』こと。自分よりも美しいものへの嫉妬・憎しみは強烈で、痛々しいほど。近づいてはいけない人間っている・・・と思いながら読む。でも、香也子の策略はあまりに愚かで、どんどん気の毒になってきた。ただ、香也子が際立っているだけに見落としていたけれど、罪を犯していない人間はいないのも確か。2012/10/20