内容説明
主人公ビリーが経験する、けいれん的時間旅行! ドレスデン一九四五年、トラルファマドール星動物園、ニューヨーク一九五五年、ニュー・シカゴ一九七六年……断片的人生を発作的に繰り返しつつ明らかにされる歴史のアイロニー。鬼才がSFの持つ特色をあますところなく使って、活写する不条理な世界の鳥瞰図!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
499
本書は、著者のカート・ヴォネガット・ジュニアが体験したドレスデン空爆に徹底的に拘泥した小説である。第2次大戦のヨーロッパ戦線が終結したのは、ドイツが無条件降伏した1945年5月8日。そして、ドレスデンへの空爆がなされたのが同年2月13日の夜だ。作家は、その当時捕虜としてドレスデンにいた。母国アメリカによる空爆で、彼自身もあわや命を落とすところだった。その日、ドレスデンで命を落とした人は13万5千人。理不尽というよりは不条理な体験だったことだろう。作家はその無益さをこういう形でしか表現しえなかったのだ。2017/01/05
こーた
276
ぼくの祖父は著者と一歳ちがいで、若いころ軍隊にとられて満州へ行った。前線へ送られるまえに戦争が終わり、幸運にというべきか、さほど悲惨な目には遭わずにすんだ、と聞いている。冗談など滅多に言わない生真面目な性格だったが、酒に酔うと饒舌になって、当時の話をした。軍隊の生活というのは現代からみるとひどく滑稽で、聞かされる僕らは大いに笑った。それでも、ほんとうに過酷な場面はあまり話したがらなかったようにおもう。祖父は戦後の日本を愛していたし、そのおなじ国がかつてやった、途方もなく愚かな戦争を心の底から憎んでいた。⇒2020/04/22
kinkin
149
初ヴォネガット。うーんこれは一度読んだくらいではわからないというか、何度読んでもわからなきっと。分かる必要がないのかあるのかそれがわからなくなった。他の読メさんの感想を読んでやっとおぼろげながらこの本の全貌が少しわかったような次第。でもまだまだ読みが足らないのだきっと。もう一度読んでみよう落ち着いて。 2016/07/25
rico
142
第二次大戦時ドイツ軍の捕虜となったビリー、物語は時間を行きつ戻りつ、時には異星に舞台を移しつつ進む。鍵となるドレスデン爆撃の描写はそっけない。多くの死と同様「そういうものだ(So it goes)」、以上。世界の運命が全て決まってて好きに行き来できる、ゆえに自由であるという異星人の世界観は「けいれん的時間旅行者」であるビリーのものでもあるだろう。しかし「わたしはそこにいた」というビリーの言葉はそんな諦観を吹き飛ばす。浮かんできたのは、無数の破片とになった自らの魂と記憶を必死でかき集めている男の悲痛な姿だ。2021/06/19
ケイ
140
ドイツ人の友人がいる。彼の身内はナチ党員ではなかったので、男は全員ロシア戦線に送られて帰って来なかったそうだ。その家族のお宅にも滞在させてもらい、戦中戦後の話も色々聞いたが、彼らが唯一戦争の事で非難めいた事を言ったのが「ドレスデン爆撃」だった。なぜあそこまで破壊しつくしたのかと悲しそうに語っていた様子。読みながらそのことばかり思い出していた。ドイツ系移民のアメリカ人である作者が、SFの形式をとって1960年代に真面目に取り組んで書いたのだなとしみじみと思う。2015/09/09
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