内容説明
子供はただ遊びほうけるだけの素朴な存在ではない。獣にも似た鋭い嗅覚を持ち、大人もおよばない豊かな感性を内に秘めている。――本書は、はるか彼方に過ぎ去った少年時代の懐かしい情景を、幼い魂に映じた大人の世界を、自伝風にあるいはフィクションをまじえて描いた珠玉作18編を収録する。少年の心の機微を見事に浮き彫りにし、清冽な詩情とさわやかな郷愁のあふれる一巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
33
☆☆☆☆ 少年時代を題材とした短編集。どの短編も完成度が高く、思春期前後のみずみずしい心情が思い起こされる。心中や妾を題材とした短篇がいくつかあるが、少年時代に強く記憶に残った出来事が井上靖にあったのだろうか。2021/04/27
コロチャイ
7
筆者水からの少年期の物語、この短編集、後半の物語な成る程、幻想的な要素を醸し出している、「あかね雲」「眼」などそう思った。また古い因習も重なり、少年期に体験したと思われた。2023/05/16
スエ
4
少年の目にうつる情景を描いた、18編の短編集。そのなかでも、駆け落ちの現場に遭遇してしまった男の子という設定がわりと多く、作者が実際に体験したことがベースになっているのだろう。ひとつの思い出が小説家の手によって万華鏡のようにさまざまに生まれ変わり、それを比較しながら読み進めるのはなかなか貴重。2014/05/02
xkxxxxk
3
筆者は母校の偉大なるOBであるが、事実本作にも地元民なら一発であるイニシャル地名が盛り沢山で、時代は違えど彼の描いた優しく懐かしい、過ぎ去った日々の情景が脳裏に浮かびましたとさ。2014/03/31
fubuki
2
【人から借りた本】子供の頃の記憶自体がバラエティに富んでいるわけでもないから、短編の素材がどことなく似ていて、読み飽きてしまった。2016/10/09