内容説明
樹齢1200年、幹の回り11メートル余、万朶に咲いた薄墨の桜は、天空に広がりみごとというより他なかった。20年ぶりに蘇った名木は波瀾の人生を歩んだ料亭の女将と、美貌の養女とその恋人との複雑な人間模様を、妖しくも美しく浮き彫りにした。格調高い文章で綴った著者会心の作「薄墨の桜」。他に「八重山の雪」収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
秋津丸
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[1]薄い本なのに、読み応えがあった~~ [2]今年の春に薄墨桜を見に行く予定だから、その前に読んでおきたかった [3]枯れかけている樹齢1200年の薄墨桜。老いていく心情、美しいものへの憧れ、愛と恩、いろいろなものが、この薄墨桜の再生を象徴として描かれていく。若い時に読んだら"あらすじ"だけ読んで終わったと思うが、この年になると、描かれている"心の襞"が少しは理解できるようになった。そのことが、うれしいような・・・悲しいような・・・2014/03/11
桜もち 太郎
1
「薄墨の桜」「八重山の雪」ともに、語り手が読者に語りかけるような作品。ドンドン物語に吸い込まれていくような感じがした。両作品ともに純粋でひたむきな人達が登場し肩入れしてしまい、その人達を支える人の心意気に感動した。薄墨桜のあるところは今は雪だろうか。歴史を知りぜひ行ってみたくなった。2012/12/24
mietreky
1
宇野千代さんの経験を題材にした小説。薄墨の桜を復活させようとする着物作家とこの桜に縁のある骨董店と料亭を経営する老女とその養女の3人の女性が織りなすストーリーとその情動の描写が絶妙。まるで、サスペンスドラマのようにワクワク、ドキドキの連続で読み手を引きずり込む手法に感服した。やはり、一流の作家だ。2009/05/28
Noelle
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長く気になりながら、初めて読む 宇野千代さんの小説。着物話同様 小説中の著者らしき着物デザイナーの気骨ある振る舞いと それをも上回る老婆と養女。実際桜の復活に助力されたとのことだけれど、どこまで事実なのか、語りものなのか判然としないまま、引き込まれて行く。宇野千代さんの桜デザインの着物も登場していて同時代で見たかったなあ。 「薄墨の桜」とはうってかわり、「八重山の雪」はまた何処かの方言混じりの語り口。湿った情緒を極力廃した、昔語りのような哀しいお話だった。2014/11/03
chatnoir
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表題作より『八重山の雪』が好みだった。40年とか50年前の少女漫画っぽい。