出版社内容情報
1922年――、
ベルリン国際無政府主義大会の招待状。
アインシュタイン博士来日の狂騒のなか、秘密裏に脱出する。
有島武郎が金を出す。東京日日、改造社が特ダネを抜く。
中国共産党創始者、大韓民国臨時政府の要人たちと上海で会う。
得意の語学でパリ歓楽通りに遊ぶ。獄中の白ワインの味。
「甘粕事件」まで数カ月――大杉栄38歳、国際連帯への冒険!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
10
人を食った大胆さで悠々と日本を逃げ出しフランスのあちこちをうろつく様子がなんだか楽しそう。木賃宿の便所の不潔に呆れたり、収監された牢獄の大きな窓となかなか良い食事と葉巻に驚いたり、故国の娘に手紙を書いて歌を歌ったり。けっこうひどい目に遭っているのに明るい筆致で楽天的に生を謳歌している。曇りのない眼で捉えたフランスは不潔で猥雑、大戦の悲惨を忘れたかのような呑気な天下泰平。これが絶筆となり関東大震災で非業の死を遂げることになるなんて…2015/10/10
Tom
4
海外に持っていく本はないかと探していたらちょうどいいタイトルがあった。機内でほぼ読み終える。パリでブタ箱にぶちこまれても余裕の態度。共産主義とは連帯できない。大杉の人柄が滲み出ていて、魅力的な人物だったのだと思う。先日9月16日は大杉の命日。2022/09/26
ymaholic
3
他人を惹きつける大杉栄の人柄が文章から伝わってくる。本書ではあまり思想については言及はないがエッセイのようで気軽に読める。ペーパーバック版は装丁も綺麗。2011/07/19
かれーらいす
2
パリや牢屋だろうと自身がどう思うかであり、それを大切な人のために伝え、日本や同志のために動き、己のやり方で生き抜いた パンクの大先生だ2023/04/13
保山ひャン
2
日本脱出記 ヨーロッパまで/パリの便所/牢屋の歌/入獄から追放まで/外遊雑話/同志諸君へ/ 大杉栄が正体を隠して密航し、国際無政府主義大会に出席したレポートや、監獄内で書いたもの、また死後発見された未完の原稿など1923年に書かれた文章を集めてある。なんともスリリングで胸が熱くなる。文章もうまくて読ませる。パリの便所が汚すぎて使えなかったこととか、下戸だったけど白ワインの小瓶を1本あけたと喜んだり。大杉栄は1923年、甘粕正彦ら東京憲兵隊によって、妻の伊藤野枝、6歳の甥・橘宗一と共に虐殺された。2020/06/16
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- 和書
- パリの日本人 中公文庫