出版社内容情報
美術家・内藤礼の30年にわたる仕事を包括する初の作品集。
最初の個展《Apocalypse Palace》から、大きな話題を呼び初期の代表作となった《地上にひとつの場所を》、2014年の《信の感情》など、国内外で発表された作品を中心に、パーマネント作品《母型》(豊島美術館)や《このことを》(家プロジェクト「きんざ」)、主要なドローイング、絵画作品、テキストを収録。
写真:畠山直哉 他、デザイン:下田理恵
内藤礼[ナイトウレイ]
著・文・その他
目次
Apocalypse Palace
遠さの下、光の根はたいら
地上にひとつの場所を
みごとに晴れて訪れるを待て
Being Called
namenlos/Licht
このことを
地上はどんなところだったか
返礼
母型〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
75
2020年金沢21世紀美術館にて「内藤礼 うつしあう創造」が開催された。かそけき糸や通り過ぎてしまいそうな水滴、多くの小さきものたちのいる空間を「うつす」というテーマのもとに展示されていた。この書での初期30年に渡る展覧会や作品の写真と言葉たちからは、「生」と「静」とを感じます。これからどんな空間を形作っていくのでしょう。豊島美術館は個人的には世界一美しい場所だと思います。2021/01/15
ゆう
25
かそけきものの気配がする初期の作品。さまざまな材質の、息を吹きかけたらその形を留めておけないような、危ういものたちがおびただしくひしめき合う空間に、生命の始まりの場所の聖性をみる。やがてその聖性を帯びた空間は、人々が生き、生活を営む場へと開かれてゆく。風に揺れる細い糸や、ひとところにとどまらずうごめき続ける水のモチーフ。ここに現れる原初の生命のイメージは、私の身体をひらき、私は私自身の身体の中に、原初のイメージを見つける。私は私の身体のなかに聖性を見つけることになるのだ。なんという、悦び、愉悦。2020/05/04
リタ
13
美術家・内藤礼さんの作品集。何度も何度も眺めている本です。彼女の作品はかそけく儚くて、だけど強くてしなやかで、ゆっくりと私を見つめ返してくれます。静謐なのに、雄弁で、ひんやりと気持ちよくて温かい。内藤礼さんの世界では、ことばは透明になり、私はまるで水の中で呼吸しているような幸福感に包まれます。“生きていることは、それ自体、祝福であるのか”。この問いに、私も内藤礼さんと同じく、熱烈にYESと答えたい。2016/10/31