感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
11
ヴィンチェンツォと、彼に一途な恋を寄せるのがニヌッチャの物語。ヴィンチェンツォは窃盗で捕まり、刑務所に送られる。その彼をニヌッチャはずっと待ち続ける。著者のエドゥアルドは父親から認知されず不幸な少年時代を過ごしたという。彼の分身ともなるヴィンチェンツォは小悪党だが、変に信心深く、憎めない剽軽さを湛えている。しかし彼には教育がない。だから簡単に自己欺瞞に陥り、道を誤ってしまった。男女の恋の縺れといった軽い戯曲を予想したが違っていた。結末のやりきれなさを含めて苦い後味の残る一冊だった。2017/05/19