感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケロリーヌ@ベルばら同盟
49
「ペクトゥス・フェキト・ヒストリクム」歴史家を作るは心なり。ドロイゼンの座右の銘を冠せられた幻視の書。ダニエル・ロンドーは、栄華と頽廃が、地下に、海中に、混淆する人種に埋もれる街の記憶を、カヴァフィス、フォースター、ダレル等、個性的な文学者の作品を通して俯瞰する。若き征服王の深紅のマントが翻った起源の街、「万物の鏡」地中海の英知のあらゆる富が栄える図書館都市、民族離散を被ったギリシア人の喪われた祖国。再生と滅亡を繰り返す廃墟の街、見出されぬ栄光の街。去りゆく黄昏に言葉だけが残り、文学者の心に街の魂が囁く。2021/04/22
うえ
2
紀行文や大王の生涯、街の歴史などを綴ったもの。「タチアナ…「わたしの父の家族はキエフに住んでいました」と彼女は語った。「母の家族はサンクト・ペテルブルクです。彼らは、1922年に、同じ船でここに到着しました。革命を逃れた亡命者の船です。船でチフスが発生し…アレクサンドリアに上陸したものの、検疫期間を経てからも、キャンバス地のテントを張った野営場で三年間暮らしたんです…父方の祖父母はふたりともキエフで虐殺され、母方の祖父母はアレクサンドリアが嫌いで、ここから出られるようになるとすぐに、パリに旅立ちました」2025/01/04