内容説明
東京朝日新聞の社会部長として活躍する渋川玄耳。離婚に直面して、飼い猫のミイを夏目漱石に預ける。二人のあたたかい人間交流の中に、明治を生きた男の心根を堂々と描き出す。風格の中篇小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猫丸
11
九州の文芸同人誌に掲載された「玄耳と猫と漱石と」「南州先生大将服焼片」の二篇。70才を超えた著者の作品が認められ刊行に至ったという。端正な品格をもつ文章がすばらしい。明治人の清廉なる人格の描写は涼しく、しかし根深いところに熱を蔵している。これほどまでに質の高い作品が人知れず生産されているとは驚くべきことだ。視線の向け方が芥川にちょっと似ている気がする。2021/05/19
イブリン
1
後半の『南洲先生大将服焼片』は読んでません。朝日新聞社会部長の玄耳渋川柳次郎が、会社を辞めるにあたって飼い猫を漱石に譲るというエピソードを軸に、暖かい交流がとても興味深かった。漱石がミイの足の裏を調べ「これはいい猫だ。足裏の相を見ればわかる」と言った場面を想像すると和む。2011/07/07