内容説明
二〇〇九年七月十九日、海水浴中の事故により四十八歳という若さでこの世を去った劇作家・演出家、大竹野正典。彼が遺した多くの劇作を紹介すると共に、様々な角度から彼の“人間像”に迫る劇集成第一巻(全三巻)。本巻では、彼の最後の活動母体となる「くじら企画」期からの戯曲八本のほか、作品解説・年譜・上演記録を収録。多くの声に応え、新装版としてついに復刊。
感想・レビュー
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nightowl
2
寄る辺ない男性たちの彷徨。それが笑いになっているホームレス三人組の日常「黄昏ワルツ」や金庫奪取に失敗した男達の反省会「屋上のペーパームーン」から実際の事件をモデルにしたシリアスなものへの変化過程な一冊。シリアス路線ではある男を称賛する謎の集会「サヨナフ」、追い詰められた男のぐるぐる廻る思考回路「密会」が解説にあるように白眉。結果として休筆に至り、最後は趣味であった登山から想を得た「山の声」で締め括られる。もっと心の軛を外してどんな作品が書かれるのか読んでみたかった。非常に悔やまれる。2018/03/08