内容説明
今日の日本は、単純なる生の原理の肯定の上に立って、経済や技術や科学やスポーツや娯楽等の価値が優先し、死をふくんだ人間存在の意味ということに対する感覚がなおざりにされ、精神の内への深化が不徹底であり、知識はますますふえてはいっても、知恵が生みだされるのはきわて乏しい時代のように見えます。このような状況に対応するためには、なによりも物や人間の〈存在〉を根底から見ぬくということが核心とならなければならないでありましょう。
目次
1 漱石を読みながら(雨がふる;悟り―空―直観;「門」―本来の自己;空の方法;「夢十夜」―「無」と「ない」;「草枕」―直観;則天去私―悟らぬ人のとうとさ)
2 ブッダのことば(空と法;宗教批判;円融)