内容説明
夭折の川柳作家、林ふじをの魂の叫びが、今ふたたび強烈な輝きを放ちはじめる―。愛と憎、生と死の156句!
目次
1 鼓動
2 愉しき悪
3 真実のかけら
4 乳房
5 火のいのち
6 絶叫
著者等紹介
林ふじを[ハヤシフジオ]
川柳作家。大正15年または昭和元年(1926)、東京で生まれる(出生日不明)。結婚後、小田原で暮らす。娘を一人もうけたが、夫と死別。病弱であったためか自らの手で娘を育てることができず、夫の親族に娘を託し、ひとり東京へと戻った。葛飾で暮らし始めたふじをは妻子ある男性と恋に落ち、その影響で川柳と出合う。昭和30年(1955)、昭和を代表する川柳作家・川上三太郎が主宰する川柳研究社の11月句会に初出席。以後、三太郎のもとでその才能を大きく開花させた。昭和34年(1959)2月19日、病没。享年34
復本一郎[フクモトイチロウ]
昭和18年(1943)、愛媛県宇和島市生まれ。静岡大学教授を経て、神奈川大学名誉教授。文学博士。専門は近世・近代俳論史。実験的俳句集団「鬼」代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tui
19
どれだけ世に知られているのだろうか。夫と死別し、病気がちの身のため一人娘を預けている【子に会ひにこの日は聖女たる仮面】。妻子ある男性と道ならぬ恋をし【子を語る貴方と距離を生むあたし】【子にあたふ乳房にあらず女なり】、娘を慈しみ過ごすひとときもあるが【抱きよせてわが子の髪の素直さよ】【子の服の見事に医療費を削る】、病は進行してゆき【力なき手に愛情をまさぐるよ】、そして34歳でこの世を去った、この作家のことを。空白の多いページは【舌端に愉しき悪を転がせる】言葉にならぬ林の想いに満ちて。2015/08/28
石油監査人
15
林ふじをは、昭和の女性柳人。僅か34年の生涯、そして、実質5年の創作活動期間の中で、林は数多くの印象的な句を残しています。この本は、国文学者の復本一郎氏が林の川柳作品の中から、156句を選んだものです。川柳には社会風刺や笑いを表現した軽い文芸作品というイメージがありますが、林の作風は全く異なり、愛と憎しみ、生と死を自然体で読んだ句が、読み手の心を揺さぶります。例えば、「火の肌に秘めし想ひを君知るや」とか「かく病めば空の蒼さをまで憎み」といった堂々とした自己主張の句は、川柳のイメージを一新してくれます。2021/09/30
fseigojp
15
人間の業というものを絶唱2015/08/29
ひじき
0
若くして世を去ってしまった女性柳人の句を集めたものらしい。速くて重い球がまっすぐ飛んでくるような、そういう句が多くてとにかく圧倒されるけど、端々に自分はすべて自分として生きていきたいという意思による艶みたいなものも見えてよい。絶対に自分自身が奪われないという強さ。2019/09/06
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- 和書
- そのまたまえには