出版社内容情報
《内容》 ■ヒトでは運動遂行のため直接的に関係する調節システムと間接的に関係する体温調節システムが相互に作用し,この2つによってはじめて運動の継続が可能となる.
■そのため,運動時の体温調節システムを理解するためには,他の調節システムとの関連も含めて検討する必要があり,他のシステムを検討するためには体温調節システムを理解することは有益なことである.にもかかわらず,これまで運動生理学の教科書においても,運動時の体温調節システムに関するスペースは少なく,省かれているものさえみられる.
■本書では運動時において「体温調節システムがどのように作用しているのか」,「体温調節システムがどのように適応的に変化するのか」といった解説のみならず,「体温調節システムが循環や体液調節システムなどとどのように連携し,運動の要求に応えているのか」という観点から,現在活躍中の方々に最新の情報を含めて執筆いただいた.
《目次》
第1章 運動と体温調節システムI.体温調節中枢からみた運動時の体温調節 1.体温調節の概略 1.1.体 温/1.2.熱出納/1.3.体温調節反応 2.体温調節機構 3.体温調節の神経機構 4.セットポイント 5.運動時の体温調節 II.ホルモンと体温調節システム(渡邊達生) 1.視床下部-下垂体-甲状腺系と体温調節 2.視床下部-下垂体-副腎系と体温調節 2.1.副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)とストレス時の熱産生/2.2.視床下部-下垂体-副腎系と発熱 III.汗腺活動と皮膚血管(芝崎 学) 1.皮膚内の構造 1.1.汗 腺/1.2.皮膚血管 2.神経性調節 2.1.交感神経活動の測定/2.2.汗腺の神経性調節/2.3.皮膚血管の神経性調節/2.4.能動的皮膚血管拡張システムと発汗神経との関係 3.神経系以外からの発汗および皮膚血管調節 3.1.液性調節/3.2. 局所性調節 IV.汗生成のメカニズム 1.エクリン汗腺の発生,分布 2.エクリン汗腺の機能 3.エクリン汗腺の構造 4.摘出汗腺による発汗誘導 5.導管におけるNaCl再吸収 6.摘出汗腺の薬剤感受性 7.エクリン汗腺分泌部における汗生成のメカニズム 8.エクリン汗腺の個人差
第2章 運動と熱放散システム I.運動と体温変化(近藤徳彦) 1.運動による熱産生と熱移動経路 2.体温上昇と運動遂行能力 3.運動時の体温上昇とそれに影響する要因 3.1.運動継続時間と運動強度/3.2.環境条件/3.3.運動形態 II.運動にかかわる要因と熱放散システム 1.運動時の熱放散システム 1.1.熱放散システムに影響する入力/1.2.温熱性要因/1.3.非温熱性要因 2.運動時の熱放散反応 2.1.動的運動時の熱放散反応2.1.1. 皮膚血流反応/2.1.2.発汗反応/2.2.静的運動時の熱放散反応/2.2.1.皮膚血流反応/2.2.2. 発汗反応 3.温熱性要因と非温熱性要因の熱放散反応に対する役割 III.AVA血流量と熱放散システム(平田耕造) 1.AVA血管 2.AVA血流量の意義 3.手(AVA血流)から還流する前腕皮静脈血の作用 4.体温上昇とAVA血流 5.AVA血流増加量と発汗量増加感度の個人差 6.AVA血流量と運動強度 7.選択的脳冷却機構 7.1. 動物の選択的脳冷却 7.2. ヒトの選択的脳冷却
第3章 体温調節システムと体液調節 I.体温調節システムと体液調節 1.なぜ体液と体温調節が密接にかかわっているか 1.1.行動性体温調節/1.2.自律性体温調節 2.体液量の調節システム 2.1. 安静時の体液の分布/2.2. 安静時の体液組成 3.体液分布,体液量の決定因子 3.1. Starlingの法則/3.2. 腎 臓/3.3. 重力,圧受容体 4.運動時の体温上昇と体液変化 4.1. 運動に伴う体液量,体液分布の変化/4.2. 運動に伴う体液組成の変化/4.3. 暑熱環境下での運動/4.4. 運動と腎臓 5.運動トレーニング,暑熱順化と体液 II.体温調節システムと浸透圧調節 1.血漿浸透圧の上昇が体温調節に及ぼす影響 1.1. 血漿浸透圧上昇による体温調節反応抑制の様式/1.2. 浸透圧調節性の体温調節反応抑制のメカニズム 2.体温上昇が浸透圧調節系に及ぼす影響 3.運動による体温調節反応の修飾における浸透圧調節系の関与 4.暑熱順化による体温調節機能亢進における浸透圧調節系の適応の関与 III.運動と水分補給 1.暑熱環境の評価 2.スポーツ活動時の発汗量・飲水量と環境温度 2.1. 身体の水分出納と運動時の水分バランス/2.2. スポーツ現場での発汗量と飲水量の実態/2.3. 給水方法と補給率/2.4. 口喝感と飲水行動/2.5. 休憩と飲水の効果/3.脱水と運動能力 4.暑熱障害 4.1. 熱中症の発生実態/4.2. 運動時熱中症予防
第4章 体温調節システムの適応的変化 I.運動トレーニングと暑熱順化による修飾作用 1.暑熱順化の発現と消失 2.発汗機能の修飾 3.皮膚血管拡張機能の修飾 4.熱放散反応の修飾に対する非温熱性要因の関与 II.運動トレーニングによる修飾作用 1.寒冷下の体温調節反応 1.1. 安静時/1.2. 運動時/1.2.1. 体温上昇/1.2.2. 発汗量/1.2.3. 運動能力 2.耐寒性の評価法 2.1. 局所耐寒性/2.2. 全身耐寒性 3.運動トレーニングの影響 3.1. 局所耐寒性/3.2. 全身耐寒性 III.民族差と暑熱順化による修飾作用 1.短期暑熱順化 2.中枢性および末梢性要因 3.季節順化 4.長期暑熱順化 5.民族差?(遺伝因子と環境因子) 6.短期暑熱順化 vs. 長期暑熱順化 IV.発育と老化による修飾作用 1.発育・老化に伴う身体的変化 2.暑熱・運動時の熱放散反応 2.1. 発 育/2.1.1. 発汗反応/2.1.2. 汗腺レベルの変化/2.1.3. 皮膚血流反応/2.2. 老 化/2.2.1. 発汗反応/2.2.2. 皮膚血流反応 3.高温下の循環特性と体液バランス 3.1. 発 育/3.2. 老 化 4.寒冷下での体温調節 4.1. 発 育/4.2. 老 化 5.運動トレーニング・暑熱順化の影響 5.1. 発 育/5.2. 老 化 V.概日リズムによる修飾作用 1.安静時の深部体温と熱放散の概日リズム 2.熱放散反応の日内変動 2.1. 動的運動時の熱放散反応/2.1.1. 皮膚血流反応/2.1.2. 発汗反応/2.2. 静的運動時の発汗反応/2.3. 受動的温熱負荷時の熱放散反応/2.3.1. 皮膚血流反応/2.3.2. 発汗反応 3.熱放散反応への断眠の影響 4.寒冷刺激時の体温調節反応 VI.時間記憶による修飾作用(紫藤 治) 1.温熱負荷に対する時間記憶の形成 1.1. 暑熱暴露の方法/1.2. 深部体温の変化/1.3. 自律性体温調機能の変化/1.4. 行動性体温調節機能の変化/2.運動に対する時間記憶の形成/3.時間記憶の意義と応用 VII.性差・性周期による修飾作用(井上芳光) 1.性周期の影響 1.1. 安静時の深部体温/1.2. 運動時の熱放散反応/1.3. 運動トレーニングの影響/1.4. 寒冷環境下での体温調節反応 2.性差 2.1. 運動時の熱放散反応/2.2. 寒冷環境下の体温調節反応
内容説明
本書は、運動時において「体温調節システムがどのように作用しているのか」、「体温調節システムがどのように適応的に変化するのか」といった解説のみならず、「体温調節システムが循環や体液調節システムなどとどのように連携し、運動の要求に応えているのか」という観点から、現在活躍中の方々が最新の情報を含めて執筆したものである。
目次
第1章 体温調節システムの基礎(体温調節中枢からみた自律分散型調節システム;ホルモンと体温調節システム ほか)
第2章 運動と熱放散システム(運動と体温変化;運動にかかわる要因と熱放散システム ほか)
第3章 体温調節システムと体液調節(体温調節システムと容量調節;体温調節システムと浸透圧調節 ほか)
第4章 体温調節システムの適応的変化(運動トレーニングと暑熱順化による修飾作用;運動トレーニングによる寒冷順化の修飾作用 ほか)
著者等紹介
平田耕造[ヒラタコウゾウ]
神戸女子大学教授
井上芳光[イノウエヨシミツ]
大阪国際大学教授
近藤徳彦[コンドウナリヒコ]
神戸大学助教授
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