内容説明
『文明が衰亡するとき』『世界地図の中で考える』『近代文明への反逆』などの高坂氏の文明論を網羅し文明の盛衰に学ぶ。
目次
世界地図の中で考える(タスマニアにて;パックス・アメリカーナ;文明の限界点;さまざまな文明・ひとつの世界;世界化時代の危機)
文明が衰亡するとき(巨大帝国ローマの場合;通商国家ヴェネツィアの栄光と挫析;現代アメリカの苦悩)
近代文明への反逆―『ガリヴァー旅行記』から21世紀を読む(『ガリヴァー旅行記』とは何か;十八世紀イギリスへの反逆;自然科学への疑問と不信;人間嫌いのユートピア;暗いユートピアの現実性)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
20
五巻では文明論にまつわる著作を集成し、巨視的で明快な視野を持っていた著者の、生態学的とすら言える文明史への一貫したスタンスが見える。「世界地図の中で考える」は、本人がエッセイ的な著作と断っておきながら、例えばイギリスのタスマニア征服における両文明の変化と個性の現れを、さまざまな要因からバランスの取れた分析で抽出し、ただの余技をはるかに超えた水準である。そんな著者のおおらかとも言える視野の広さと多様な分析眼、そして歴史観が最もよく現れたのが、表題作の「文明が衰亡するとき」2014/04/16
Uzundk
3
文明が衰亡する時を読み面白かったので手を出したが、やはり面白かった。本質的な滅びは武力では無く細菌によってもたらされ、文明によって痕跡が上書きされたタスマニアの例から始まる。その次の文明の限界点でアメリカはアメリカの強み故に第二次に勝ち、その後の戦争に負け、統治に失敗を続けていること。イギリスが良心的になるほど自らの信念を傷つけられること。自らの文明の範囲と軍事力の範囲を見誤り、理が通らぬ故に帝国は悩みを抱えると書く。ここに経済などが入ってきて手が付けられない状態だな感じた。2015/03/03
denken
2
論文集の収録作品が比較的手に入れやすいもののみなので,ちと期待はずれ。論文の内容自体は面白いのだけど。でもこの巻に収録された作品全部が,既に一般向けに出版されたものとなると,何か物足りないなあ。「世界地図の中で考える」は評判の高い作品ではある。ただ個人的には,著者のあまり知られていない他の作品と比べて,段違いに素晴らしいと思わせる何かをこの作品がもっているとまでは思わない。これをもって代表作と言うなら,他の作品だって代表作だよね,と思う。「近代文明への反逆」は文学の講義。解説は塩野七生ファンにお勧め。2009/08/23