内容説明
ちいさなたましいがふたつゆっくりとちかづきよりそいやがてひとつに…。「のはらうた」のくどうなおこによる感動の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
112
詩と散文を一つに溶け合わせた工藤さんらしいユニークな作品。ねことさかなの友情を『のはらうた』の仲間たちが見守る。ねこは生きるためにさかなを食べなければならない。そのことを悩む。このあたりは宮沢賢治に通じるところがあるのが、深刻なトーンにはならないで、物語は進んでいく。透明感があって、ユーモラスで、優しい。「猫走る」ではなく、「ねこはしる」となっているところが面白い。この「ねこ」は広がっていく猫だ。黒猫でもあり、三毛猫でもあり、アメリカンショートヘアーでもある。そのねこは走って走って、地球全体を包み込む。2017/01/27
ふう
83
工藤さんの野原には、たくさんの動物や植物たちが命の詩を奏でながら生きています。工藤さんは、ときに虫になったり、草になったり、風になったりして、彼らの言葉をわたしたちに伝えてくれます。命はこんなにキラキラしていて、楽しくてユーモラスですばらしいものですよと。でも、ずっと野原にいると、命のはかなさも生きる厳しさも受けとめなくてはなりません。そんなときは少し寂しい…と。ねこのランも知りました。楽しいことも怖い思いも悲しさも。全部心にしまって、力いっぱい走ります。命のかぎり生きています。2019/02/28
mike
71
想像力を掻き立てられた。失敗ばかりの小さなランの姿を。池の中をポツンと泳ぐ魚の姿を。広々とした野原でランを見守る者たちの姿を。スマホを置いて、自然の中でひとり寝転んで、風の囁きや草花の匂いを全身で感じたくなった。2025/02/19
あん
70
『ねこ自身』で「ねこ専門書店が選ぶねこ好きのための10冊」で紹介されていた本です。内気でのろまな子猫のランと、魚との交流と成長の物語。 ホッコリとしたストーリーが、ランの成長とともに弱肉強食の世界ならではの切ないラストへと展開していきますが、読了感は悪くありません。 ただし、涙腺崩壊にご注意です。2016/05/01
ぶんこ
64
図書館に予約して、手元に届いてみたら、なんて可愛い装丁なのでしょうと驚きました。 えっ、詩集? 詩集でした。 落ちこぼれの子猫ランと、一匹だけで池に住む小さな魚の友情物語。 それを見守る木・蟻・大地やススキ。 静かで優しい時間が流れていたのですが、満月の夜に試練が。 もうこれ以上は書けません。 小さくて薄い本ですが、あまりに可愛くて私が少女だったら、いつも手元に置いて眺めていそうです。2015/12/24