内容説明
混迷する世界の政治情況。政治資本が喪失されている。大学言説の知性による「社会の政治」が個々人を政治的に情動的に不能化し、「欲望の政治」が感情資本主義と感情専制主義の右傾化を強めている。真正の政治資本とは個々人の政治的自律性の自分技術である。政治概念を転換する理論書。
目次
0 政治資本の原型
1 政治資本と政治的なものの界
2 政治表象の現在
3 文化政治と政治資本
4 「反権力」から「非権力」への政治資本
5 場所統治の政治資本
結章 自律の政治資本 スコラ的大学言説を超えて
著者等紹介
山本哲士[ヤマモトテツジ]
1948年生まれ。信州大学教授、東京芸術大学客員教授をへて、文化科学高等研究院ジェネラル・ディレクター。教育学博士。政治社会学、ホスピタリティ環境学など専門分割領域にとらわれない超領域的専門研究の研究生産と文化生産を切り開いてきた。大学を超える研究生産機関として文化科学高等研究院を1990年に設立、海外の研究者たちと交通し、国際セミナー/会議をなす。さらにその超領域的学問の実際活用をなす文化生産ビジネス機関としてJapan Hospitality Academyを設立、など。現在、「日本文化資本機構」の設立に取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sayan
16
制度とは人々の生存や権利を無条件で支える枠組みだ。だが2025年、トランプが再登場し、貿易・安保・社会保障までもが交渉カードと化すと、制度は「取引の結果得られる報酬」に転じた。保障は見返りを引き出すカードを持ち取引に参加し勝利した者にのみ与えられる。この現実に対し本書は、制度でも取引でもなく目の前の他者への倫理的応答こそが政治的資本だと語る。だが今や制度の内にも外にも居場所を得られない人々がいる。NOカードNOホープ。制度や取引にもアクセス困難な世界で本書の語り自体が、語れる者の特権として苦い余韻を残す。2025/03/21