感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けん
2
本書は、長野県松本市に自身の民芸品コレクションを紹介する松本民芸館を建てた丸山太郎氏が、手術を受けるために上京し、2週間ほど不在だった折に幼い2人の愛娘に向けて描いた手作り絵本で、かつては民芸館に展示していたものだったという。タイトル通り、上京したタヌキが各種東京の名所を回るという旅行記なのだが、戦中の当時の世相を反映し、配給チケットがなければ食べ物も買えず、宿泊した旅館は節電で早くに消灯、不便に閉口し、故郷の娘を懐かしく思うという内容が、荒削りだが温かい筆書きの絵と文で描かれている。愛すべき一冊。2020/05/16