感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
87
わたしちょっとだけ味戸ケイコさんの絵が苦手です。実をいうとこわいんです。きれいなものの背後に控えている影や闇の暗さがこわいのです。安房直子さん大大好きで、味戸さんの絵との相性も素晴らしくよくて、この本ももちろん大大好きなのだけれど。この本を本棚から取り出してページをめくるときはちょっとだけ覚悟が要ります。物語にさらわれて戻ってこられなくなりそうで。善良なひとたちの願いや憧れの果てに裏返った世界の、鈍くひかる景色に取り残されそうで。2020/01/25
天の川
24
鈍色の空や夜の闇、湿った空気を感じさせる儚いお話たち。夢に飲み込まれる少女、少年に恋をするひまわり、スパイを疑われた父と共に町を去った少女…陰影のあるお話に惹かれる。これらの物語が掲載された季刊誌「詩とメルヘン」の大判の紙の質感、前書きの「それでもあなたは買いますか?」というやなせさんの言葉を思い出す。当時も、味戸ケイコさんの挿絵に彩られた安房さんの物語が大好きだった。私にとって安房直子さんの作品に味戸ケイコさんの絵は必須なのだと再確認。2014/04/25
うーちゃん
20
トランクから飛び出したほたるを追って、妹のいる町へ。不思議なアイシャドウを塗った娘が見る夢は、青い青いアイリスの海。お屋敷の奥さまの秘密は、うす桃色の真珠が知っている。白猫に導かれ 、空色のベランダにのって、星をとりに。雪の中に落とされたりんごが出会うのは、星の少年。小鳥とばらのパイを食べた少女は森を走る。ばらに姿を変えられる前に。どんなものでも消せるけしゴムは、水仙のにおい。柳の下に埋めたのは、誰にも内緒の星のおはじき。まるで美しい魔法のような、安房直子 十七の物語。2014/10/24
うめ
19
美しくて、優しくて、チクリと痛くて、切なくて。小学生の頃、とっても大好きだった物語に、作者がいたことを知ったのは、かなり大きくなってからの事。時を超えて再会した作者の方が紡ぐ物語の中に、痛みや悲しみや、ある種の官能を探り当ててしまったのは、確実に私が、大人になってしまった、証、なんだな。少女の頃の様な喜びで言葉を追うことはもう出来ないから、物語のもつ仄かなぬくもりを、胸に抱いておこうと思いました。素敵な、ほんです。2014/12/06
たまご
14
儚く、きっと大人だからこそよりほの暗い作品たち。挿し絵も作品と一体化した、素敵な本でした。子供のころであってたら、どう感じたんだろう…2022/10/06
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