内容説明
本書は、1999年2月6日に著者の教授退任を記念して、東京都調布市緑ヶ丘の白百合女子大学に於て行われた最終講義を収録したもの。高名な歌人であった母、葛原妙子との確執にも触れ、児童文学と自分の人生とを重ね合わせて語る…。最終講義ならではの言葉は感動的である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Hiroh
19
1999年の最終講義。児童文学が、大学で研究するものでなかった時代から道を切り開いてきた著者。優れた児童文学の書き手の多くが、不幸な子供時代を送っているというのはやはり心に刺さる。幸せな子供時代を過ごしたフィリパ・ピアスが、ほとんど少女を主人公とした作品を書かなかったことの意味。歌人であった母葛原妙子との葛藤が多く語られ、母と娘の問題の救われがたさに暗澹となる。(自分も救われる日は来ないんだろうと。)萩尾望都といい、ここまで自ら道を切り開いて高みに達した人にして……2021/08/17
fonfon
6
素晴らしい本だった。物語とは何か、なぜ人は物語を必要とするのか、を説き明かされている。歌人であった母葛原妙子との確執がえんえんと語られ、母がモーツアルトなら猪熊葉子はサリエリ,凡庸の権化!であった、と断じられるのに涙す。10年も積読していて、激しく後悔した。もっとはやく読んでいたら、私と子どもたちの関係は今とかなり違ったものであったはずだ。遅かった。無念。。2011/11/28
じょうこ
5
猪熊葉子先生の退官時最終講義。1999年2月のことだそうです。ボストン作「海のたまご」の訳者として猪熊先生のことを知り、著書を読んでみたく選んだ本。大人の中にサバイブしている「子ども性」の話から、ご自分の子ども時代の話、芸術家である母親との軋轢など幅広く語っています。最初の方で、子どものための優れた文学作品を残した人達の多くが不幸な子ども時代を経験していると触れており、深い論考はここにはないですが、私が気になっていたことと重なり、サトクリフなど読んでみたいなあと。 2021/08/09
小倉あずき
2
1999年の退官の際の最終講義をまとめたもの。このあと2016年に上梓された『大人のための児童文学案内』のベースはここにあったんだ、と気付く場面が何度もあった。 児童文学が、まだ研究対象として扱われていなかった時代から児童文学の研究をしていた著者は自身が不遇であることには鈍感で「いろんな幸運が重なって退官まで勤め上げることができた」と述懐しており、そのおおらかさこそが児童文学の懐の深さによって培われた包容力なのかな,と感じた。昨年お亡くなりになったそうでご冥福をお祈りいたします。2025/10/18
タペンス
2
猪熊葉子さんもなかなかの苦労人という印象を受けた。2022/04/03
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