内容説明
この世で最も高きもの、「人間人格」の解放をめざす個人主義のための闘いは、内面と外面、倫理面と社会面の二つの戦線で進められる。倫理的個人主義を高唱したのはトルストイとドストエフスキー、社会学的個人主義を論証したのはミハイローフスキー。ロシア・インテリゲンツィヤは、「大なる社会性」と「絶対なる個人主義」の結合というロシア社会主義の尊い遺訓を、次世代の者に託す。本邦初めての完全翻訳。
目次
七〇年代
ラヴローフ
ミハイローフスキー
トルストイとドストエフスキー
ナロード主義の危機―ズラトヴラーツキーとグレープ・ウスペーンスキー
社会的小市民主義時代
九〇年代
チェーホフ
ゴーリキー
「理想主義的個人主義」「デカダン主義」から「シンボリズム」へ
二〇世紀の門口にて
著者等紹介
佐野努[サノツトム]
1937年東京都生まれ、1993年没。早稲田大学大学院露文科博士課程修了。慶應義塾大学文学部教授。ロシア・ソヴィエト文学、ロシア思想史専攻
佐野洋子[サノヨウコ]
1973年神奈川県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科ロシア文学専攻修士課程修了、博士課程満期退学。慶應義塾大学他非常勤講師。ロシア口承文芸、19世紀ロシア文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てれまこし
4
ロシア・インテリゲンチャの天敵は小市民。といっても一つの階級でない。貴族でも知識人でも農民でも小市民的たりうる。ロマン主義の気高いものへの欲求も、リアリズムの現実を見つめる勇気ももたない事なかれ主義、事大主義の徒で、ハイデガーの頽落した現存在、オルテガの大衆など、思想史に繰り返し描かれる悪役である。自らがインテリゲンチャの一員である著者は、小市民主義に対する闘いとしてのその歴史を描くことで、様々な作家・思想家の同一性を規定した。革新対保守ではなく、思想対無思想の対立軸である。この対立がどこまで妥当するか。2019/03/08
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- 和書
- 妖怪一家九十九さん