内容説明
世界各地を転々とした外交官が“古いシルクハット”を回すとき、都市の記憶が数々の逸話とともに想い起こされる。プラハに育ち、イスラエルの外交官として活躍したチェコ語作家アヴィグドル・ダガンが綴る晩年の代表的な短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KI
20
いつも近くにあったから、彼は僕のことをなんでも知っている。2019/07/19
きゅー
7
イスラエル大使として各国で経験した出来事を集めた短篇集となっている。しかし本作は決して明るくはない。この短編集は常に死によって幕を閉じており、それも英雄的な最期ではなく、ひどく個人的で、寂しげな最期だ。そしてまた、この作品の背後には神の存在が見える。その神は、彼が常に自身の根底に置き、悩める時に常にそこに立ち返る拠り所の存在のようだ。彼と同様に、神の姿を追い求める人間が何人も登場するのだが、彼らもまた自身のアイデンティティ、苦しみの救済として神を求めている。しかるに、それが得られたかどうかの判断は難しい。2012/03/14
ダージリン
1
外交官だった人物が書いた作品だけに、大使館といった全く馴染みのないところが舞台になっているのが変わっていて面白かった。外交官の世界といっても華やかな部分が描かれる訳ではない。シルクハットを回すと過去のエピソードが甦ってくるという設定で、各国の都市を舞台にペーソス溢れる上質な短篇が語られていく。悲しい話が多いのだが、抑えたトーンで語っていく語り口がなかなか良かった。2017/02/26
地雷原
0
本作を一語で表わすなら、「大人の雰囲気」。世界の各都市を舞台に、何が起きても「ま、滅多にないことだが、これも大使の仕事だよ」と言いそうな成熟した人物が立ちまわる。それだけで何だかうっとりしてしまう。「失踪した大使」「プラターでの出来事」が良かった。一方、ユダヤを語る場面が多い話、共産主義への憎しみを語る話は、それが作家にとって根源的な問題だとは承知しつつ、やはりくさみになっていたと思う。チェスタトンがカトリックの保守主義者という顔を前面に出して書いた話はちょっと良くないのに似る。2012/08/02
直
0
外交官の生活と意見。2009/10/22
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