目次
第1 国家主義とは運命決定論の是認である、という命題について
第2 ドレフュス事件(ドレフュス問題の位置;《絶対》にこだわる知識人、あるいは屁理屈屋;知識人への反論:相対化する感覚;レンヌにて;デルレードの役割)
感想・レビュー
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夜間飛行
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バレスはドレフュス個人よりも、彼を政治的シンボルに担ぐ人々を国家の敵と見なす。なぜならバレスは、土地と死者とを知った時から祖先の血脈を自らの「背骨」としてきたからだ。解説によれば、バレスは故郷ロレーヌの現実を歪曲しフランスに同化しようとした(これは棄教ユダヤ人が反ユダヤ主義に傾く心理に通じるらしい)。自らの異質性を国家の色に染め上げたバレスに人権意識は薄い。だがその偏狭さの一方で、《ドレフュス主義の中にあるフランスの騎士道精神》と反対派を讃えてもいる。近代への危機意識としてのナショナリズムに興味を覚えた。2020/04/29