内容説明
ユーモラスで、想像力に富んだ、木製の小さな人形―彼女は語りはじめる。「私のいる棚の下の窓わくに、一艘の漁船がいかりを下ろしている、そこからは潮の香りがただよってくる…」彼女は思う、その船の船長が、いつか自分に会いに上がってくるのではないかと。彼女のここちよい生活に欠けているただひとつのもの―ロマンスと一緒に。彼女は思う、大好きな犬や貝のコレクション、こだわって選んだ調度品、おいしそうなせっこう細工の食べものたちは、船長と共有することで、いっそう、その価値が高まるのだと。この作品でゴフスタインは、ミニチュアの世界の静かで、あたたかな物語をごくシンプルな線で描き出す。そして詩人の谷川俊太郎が、簡潔で洗練された日本語訳を添えて、その世界の魅力を私たちのこころに届けてくれる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masa@レビューお休み中
92
これは何なんだろうか…。もしかしたら、これはラブストーリーなのだろうか。不穏ではないのに、穏やかにこの物語を見ていることができないのは、そこに障害があるからなのだろう。船長は人形、私も人形、船長の漁船は置物、一緒に食べる夕食も置物…。これは何を意味するのだろうか。超えられない壁なのだろうか。それとも、抜け出ることができる別の世界があるということなのだろうか。人形の私はしあわせなの?人形の船長は愛されているの?私と船長には本当に感情はあるの?疑問形の感情がどこまでも付きまとい離してくれない。本を閉じても…。2016/04/27
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
74
小さくてやさしい世界♪ 主人公は小さな木の人形。彼女は想像の世界で遊んでいます。家の窓枠に飾られている一艘の漁船。その船の船長がいつか自分に会いにきてくれるかしら? 彼は、私の貝のコレクションを気に入ってくれるかもしれない。せっこう細工の食べ物を飾って夕食に招待しよう。ロマンスが生まれるかもしれない。彼が航海に出かけている間、私は無事を祈って穏やかに過ごそう。留守中に起こった事は何でも、帰ってきた時に話す値打ちがあることなのだ。シンプルな線で描かれた絵。谷川俊太郎氏の訳がすばらしい。1996年10月初版。2015/01/18
sin
61
願いがあって、想いは強く…でも人形のあなたには叶うはずがない?たとえ愛しの船長さんが訪れてあなたにプロポーズしたとしても「…そして人生は前と何ひとつかわるところはないだろう。」結局いつもと変わらない日が続くとしても、会ったことがないとしても、あなたは「…幸せになる、彼がそこにいるから。」幸せは心の中にあるのだから…。2016/10/08
スプーン
33
詩情溢れる出来。素晴らしい。2023/11/29
ツキノ
23
【木製の小さな人形の想像】1996年10月発行。谷川俊太郎訳。想像だけでしあわせになれる。【15】2022/01/20
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