内容説明
戦前、上海共同租界工部局、上海特別市政府「日本語室」室長の要職にあった著者が、貴重な体験と豊富な資料を駆使し、上海の四季折々の行事、上海の食譜、華麗な演劇、花街、美しい陶磁器、文房四宝を描いた、国際都市上海の風物誌。
目次
1章 上海の風物(歳事記;上海の公園・私園)
2章 上海の食譜(料理考;薬用の功罪)
3章 上海の舞台(演劇観;群芳大会;流〓の都―上海哀歌)
4章 伝統美術・工芸(文房四宝記;陶磁器考)
5章 上海の名勝旧跡(官署・寺院・教会;ある墓標)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
88
先月読んだ『ハルビン駅へ』から、読み友さんの紹介で。前書はロシア側からの哈爾浜全般。本書は都市計画に焦点を絞った哈爾浜。ロシアによる東清鉄道敷設のため松花江渡河地点に建設された草創期の哈爾浜と満州国建国後、日本による鉄道付属地外へ拡張された哈爾浜の都市計画を専門家の視点で。ロシアが「東方のモスクワ」たらんと心血注いで建設した緑豊かな美しい都市景観を高く評価。満州国成立後には、当時の日本国内には存在しない理想的で雄大な都市計画が、市街地の全面的公有化という画期的な方法で着手されるも日本の敗戦で未完に終わる。2021/06/06
残留農薬
1
建築の専門的なところは調べつつ読んだ。ハルビンに根付いたロシア的であったり、日本的であったり、中華的であったりする様々な都市計画の思想が紹介される。また、帝政ロシア(中東鉄道)による開発にはじまり、日本人の入植、その後の中東鉄道を巡る白系と赤系の抗争、そこに入り込む北京政府と地元軍閥、さらに満洲国建国後は満洲国政府と市政府、満鉄、関東軍の権益争いなど、全く一枚岩ではない人々がハルビンとその都市計画を巡って抗争を続ける様は読んでいて手に汗握るものがあった。2013/02/16