内容説明
妹のまなざし。貴重な新事実、生き生きと―。宮沢賢治を愛し、関心を抱くすべての人びとに贈る。
目次
本編 賢治兄さんのこと(兄さんについての記憶の始まり;兄の声;屋根の上が好きな兄と私;兄の入院;北小屋のこと;兄が母の役にたったこと;母の染め物;「万福」さんのこと;大内納豆屋さんのこと;母の旅行と兄の徴兵検査;寒い朝;浮世絵;花巻祭のこと;陰膳;姉の死)
付 岩田家の人びと(ごあいさつ 若い皆さんに;豊蔵おじいさんの誕生日の日に)
著者等紹介
栗原敦[クリハラアツシ]
1946年生まれ。実践女子大学名誉教授。宮沢賢治学会イーハトーブセンター代表理事等を歴任
宮澤明裕[ミヤザワアキヒロ]
1978年生まれ、宮澤賢治記念館学芸員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ワンタン
13
70歳を過ぎてから書き記したという、兄・賢治やその両親らの思い出。身近な親族に配るためにまとめた冊子が元になっているそうだが、妹の眼から書いた、床に伏せた姉・トシに乞われて雨雪を取って来る「永訣の朝」の有名な場面、文章の端々から伺える、父・政次郎が賢治に示す厳しさと愛情など、ごく薄い本ながら、伸びやかに書かれた文章が読んでいてとても心地よかった。2018/01/17
gtn
12
宮沢賢治の妹シゲが、晩年に家族を振り返る。「苦しい苦しい父と兄の法論、心をえぐるお互いの内省」兄賢治は、念仏の強信者である父に激しく折伏したようである。その様子は妹にとって恐怖だったとみえる。結果、父と兄の間に亀裂が入り、兄は家出する。しかし、姉トシの死の間際、父は家族に題目を上げて姉を助けるよう命ずる。表向きはさておき、兄の折伏が父の生命に刺さっていたようだ。2018/10/14
山口
6
宮澤賢治の二番目の妹シゲさんが70歳を過ぎた頃から兄の思い出などを書き記した本。賢治の生き生きとした生活が記されていて賢治ファンにはたまらない一冊です。読んでいて当時の生活や景色が思い浮かびます。母イチさんの旅行の話も興味深かったし、「永訣の朝」一番上の妹トシさんの死に関しても語られています。屋根の上で大空の星を眺めていた賢治、何を考えていたのでしょうか。2018/05/10
あられ
4
今で言うところの自分史にあたるのだろうが、東北人の人柄に加え、何度も思い返されたことに加えて、編集者の手が入り 独りよがりなところが感じられず、宮沢賢治の姿が現れて楽しんだ 語り継がれるてこういうことなんだと思った2021/10/29
大臣ぐサン
4
これはすごい本ですよ。宮沢賢治の肉親といえば父政次郎、妹トシ、弟清六が取り上げられるケースが多く、これまで妹シゲはあまり表立って取り上げられることはなかった。しかし、この回想録では妹の視点からの賢治が捉えられている。それは肉親でしか見ることができない新たな賢治像だ。分量は少ないが、『兄のトランク』と比肩するほどの価値がある回想録といえるのではないか。2019/03/26