内容説明
改元の年の異動で山奥の町に着任した公務員「私」は、集落に伝わる惟喬親王が見たという龍の夢の伝説を追って、この国のもうひとつの姿を目撃する。(「改元」)。山あいの地主の一族に生まれた少年は、日猶同祖論を唱える父によって「世界の救い主」となるべく「十」と名付けられた。第二次世界大戦をまたいで繰り広げられる、めくるめく年代記。(「死者たち」)。龍の夢が「私」を通過するとき、この国のもうひとつの姿があらわれる―現代日本小説屈指の剛腕による、抵抗と革命の二篇。
著者等紹介
畠山丑雄[ハタケヤマウシオ]
1992年生まれ。大阪府出身。京都大学文学部卒。2015年『地の底の記憶』で第五十二回文藝賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キク
51
若い方の2作目だけど、面白かった。少なくても、登録が22人で、レビューは僕が最初というレベルの作品ではない。多分、これから認められていく人なんだと思う。すごくしっかりした文体と、若さゆえの志しがある。ユニークさだって、奥の方に若干感じられる。志しだけじゃ面白い小説にはならないけど、志しのない面白い小説を読む気にもなれない。なんなら大概の場合、その二つはお互いに邪魔をし合っているようにも思う。うまくいかない。でも、いつかすごい小説を書くという予感を感じさせてくれるって、それだけですごい新人なんだと思う。2024/12/04
スミス市松
7
伝承の古層から生じうる幻想的な現象を日常的な尺度で捉えていく語りの姿勢が好ましい。その手法は往時の南米文学を思い起こさせるものだが、本書を読み終えて物語から離れれば、読者の現実へのまなざしが幾許か豊かになり、それはわれわれの〈日常〉に立ち向かう力にもなるのではないだろうか。良作だと思う。2025/01/02
かに丸
1
内容があまり理解できないながらそのわからなさが逆に心地よいような不思議な感覚で読まされた。2025/01/28
中村
1
"「アメリカで死んだって、お盆ぐらいには帰ってきて欲しいわ。邪蘇の神様だってそれぐらい許してくれるでしょう」"(p, 147)/両作品ともどっしりとした言葉運びが魅力的だった。2025/01/24
空
1
こちらの理解力が足らないがゆえ、この本の面白さに気づけなかった。2024/12/18