内容説明
スタバで勉強中の優等生・山岸美羽に飛んできたペーパーナプキン。“気をつけて。盗撮されてる”。窮地を救ってくれた浜野比奈と放課後を過ごすようになるが、次から次へと思いがけぬ形で追い出されてしまう。家に居場所がないと感じている美羽、パパ活のようなことをしている比奈、それぞれの事情が明らかになり…。『ここは退屈迎えに来て』から12年。著者が初めて地元・富山を舞台に描いた、受け身でもなく、逃げるだけでもない、「いまの、その先」の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ikutan
67
山内さんの出身地、富山を舞台に、女子高校生の日々と友情を描いたお話。スタバで勉強中に盗撮されそうになった美羽は、助けてくれた比奈と後日再会してから、意気投合。二人は地元富山で遊び回ることに。楽しそうな笑い声が聞こえてきそうなイマドキのテンポのいい会話でサクサクと。そんな中、感性豊かな美羽は、世界史で習った様々なできごとや紛争が絶えない現状にも思いを寄せる。実は比奈には事情があり、後半はハラハラする場面も。世界が広がっていく二人の姿が眩しいね。おばさんでも楽しめたけれど中高校生におすすめかな。 2025/01/23
olive
34
100ページほどの中編小説で本の厚さは薄いが中身は濃厚。著者の地元の富山が舞台。スタバで盗撮されかかったところを救ってくれたことがきっかけで出会った二人の女子高生。自分の力だけではどこにも行けない女子高生のジレンマを、いまさら聞けないパレスチナとイスラエルで起きていること。ガザ地区って何?を絡めながら描く。上手い!モダンな切り口だが内容は深い。高校生の目を通して、今の居場所から羽ばたこうとする姿が応援したくなるカッコよさだった。2025/01/27
水色系
32
100min.NOVELLAシリーズですぐ読み終わるんだけど、さすがに山内マリコさん。女の子の気持ちを丁寧に描いている。高校生の頃って自分の自我が確立されつつあるけれど、大人ではないという微妙な時期だと思う。自由がきくという意味で、27歳の今大人になってよかったなと私は思っている。それこそ高校生のころは将来を悲観してしかなかったけど。楽になった。ただあのジリジリした気持ちも覚えていたい。2025/03/29
さくら★もち
27
家と学校と塾、時々スタバが生活のすべてな女子高生・美羽。自由奔放な女子高生・比奈。盗撮疑惑を機に仲良くなったふたりが、富山駅周辺の未知の場所に足を運び、チルできる場所を探し求め彷徨い歩く、という物語。ふたりが街を巡る姿は楽しげかつどこか寂しげで一気に引き込まれた。美羽の高校の世界史の先生が語る世界の仕組みに思わぬ形で自分が関与していることを突きつけられ、胸がぐっと詰まる。居場所や自身の尊厳を奪われる可能性は誰にでもあるのに、他人事だと目を逸らす。それじゃだめだ。もっとアンテナを張り私も何かしなきゃ。2025/02/02
桜もち 太郎
24
「居場所を追われるの、もううんざり、ほんとに」、富山に住む女子高生美羽は、スタバで勉強中に盗撮男から比奈に助けられる。二人は放課後に富山の町を探索するが、そこには本当の居場所がない。富山の閉塞感、母親との価値観の違い。世界史の岡部先生が語るパレスチナとイスラエルの問題。世界で起きている事と自分との温度差はなんだろう。能登の震災しかり、自分には何ができるのだろう。富山という土地や母親からの逃亡。「どこか知らない、遠い町へ行ってみよう」逃げることで見つかる何かがあるのかもしれない。世界に繋がるのかもしれない。2024/11/30