内容説明
職場でトラブルを起こして仕事も居場所も失った深浦奈波は、しばらくの間、五島列島の祖母のもとで過ごすことになった。小学生の頃にも暮らしていた家だ。過疎化が進む島で、奈波はどこか懐かしい少年に出会う。「今日は何ばして遊ぶ?」彼とともに過ごすうち、奈波は少しずつ小学校時代の出来事を思い出して…。失われたものたちと再び出会う、ひと夏の不思議な体験。すでに現実には存在しなくなったもの/ことの「化身」との対話が、疲れきっていた主人公を再起に導いてゆく。五島列島の架空の島を舞台にした、ローファンタジー×現代ドラマ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なみ
14
職場で居場所を失った奈波は、小学生のときに暮らしていた五島列島の祖母の家でしばらく生活をすることに。 不思議な少年や少女と出会い、昔の出来事を思い出していく奈波の描写に、どこか懐かしい気持ちになりました。 祖母の優しさや穏やかな時間によって、奈波の心が少しずつ癒えていく様子が丁寧に描かれています。 明るい未来を想像させるような終わり方も素敵でした。2024/06/13
読書好き・本屋好き堂
6
初読みの作家さん。 長崎の五島列島が舞台。 表紙絵も素敵で、読んでいると五島列島の景色が頭に描かれていく✨ 都会の生活に疲れ果てた奈波は、幼い頃少しだけ過ごした五島列島の祖母の家に行く。 そこで、出会うものは?! キラキラと輝くおとなの青春小説に心が癒やされる😊2024/03/18
蝶子
6
ツイッターであたらよ文学賞という新しい文学賞ができたと聞いて、その流れで追っている出版社の本刊行第一冊目。綺麗な田舎だ。田舎のいいところだけ抽出したスローライフもの。でもおばあちゃんに話したことがいつの間にか島中に伝わっているとか車が知り合いと乗り合いで島民の仲間たちと一緒に買い物に行くとかプライバシーのなさがたまにじわじわ田舎の闇が垣間見れてそういうことあるよなと思うシーンもあり。島での一人の女性の再生を描いた話で、主人公にすごく共感する。この先もうまくいくといいね…。2024/03/10
石嶋ユウ
2
都会での日々に疲れた奈波はかつて一年半だけ暮らした長崎の五島列島に戻ってきた。そんな中、通っていた小学校の前でガクという一人の少年と“再会”する。やがて、ガクやその仲間たちとの不思議な交流を通して彼女はかつての自分を思い出していく……。 時代小説で活躍する著者による現代が舞台の作品。 自分の人生に疲れ切ってしまった奈波の心情の変化が丁寧に綴られているのが良かった。登場する人たちが皆、優しくて真っ直ぐで魅力的なのも良い。ガクたちとの交流を通して立ち直っていく奈波の姿に勇気をもらえる一作だった。2024/11/10
遠宮にけ❤️nilce
1
都会で孤立した子供時代を送っていたナナン。家族の海外移住をきっかけに離島に住む祖母の家で世話になることに決める。再び日本で住むことになった家族に呼び寄せられ、中学進学をきっかけに都会に戻るナナンの、あたらしい自分になる、性格を変えたいという頑張りは見事成功して見えるのだが。期間としては短かった離島の時を振り返り、ナナンの愛したもの、力付けてくれたものがそこにはいっぱい詰まっていて、その後の自分を支えてくれていたことがわかる。人口減少社会。故郷はずっとそのままあるものではないと突きつけられる物語でもあった。2025/02/06