出版社内容情報
水は山々の頂の皺から始まる。
沢を下る水は、旅人のように自然に身を任せ英知を養う。コケを伝わって集まり、小さな音を立てて渓流となる。
水は、ときには本流からそれて田んぼや集落に寄り道をする。それも旅人の特権。
細い溝や水路を通って、土の匂いを染み込ませ、人々の声を記憶する。
旅人は、そのあと巨大な渦の中に埋没してしまうのか。いや、粒子となって舞い上がり、峰々に帰るという新たな旅立ちが待っている。
写真家・今森光彦氏の里山作品から「水の匂い」をテーマに選りすぐった作品を掲載。滋賀県立美術館で開催の同名展覧会の公式図録。里山に宿る多様な生態系と、その土壌となっている
豊かな環境は、私たちの忘れてしまった原風景を、水の匂いとともに思い出させてくれるかもしれません。
執筆に
今森光彦
芦髙郁子(滋賀県立美術館)
佐藤守弘(同志社大学)
関次和子(東京都写真美術館)
目次
第1章 はじまりの場所
第2章 萌木の国
第3章 光の田園
第4章 湖辺の暮らし
第5章 くゆるヨシ原
第6章 還るところ