感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃちゃ
74
大人の知らない子どもたちの戦争。その実相が5人の戦争孤児の姿を通して炙り出される。戦争は子どもたちから否応なく大切なものを奪い去る。親兄弟を失い衣食住に困っても、周囲の大人たちからの適切な援助は容易に得られず見捨てられる。身寄りがなくなった琴子は、自らを男であると偽って懸命に生き抜く。それは人としての尊厳を守り、自らの誇りを失いたくないという、彼女なりの咄嗟の判断だったのだろう。子どもたちが背負う悲しみや怒り、孤独や矜持を、私たち大人は「知らない」で済ませてはいけない。戦争の記憶を受け継いでゆくために。2026/10/31
ケンイチミズバ
66
食べなくては生きられない。獣と同じだ。狡猾に殺伐と否が応でもあなたはもはや子供ではいられなくなる。わたしの知らない子供たち。たくさんのあなたたちをこれっぽっちも知らずごめんなさい。社会が大人が守り育てるべき幼い「小国民」をいざ敗戦すると自分のことしか考えられなくなり見捨てた。身寄りのない子供など知ったことかと。学童疎開・戦災孤児・浮浪児狩り、言葉だけが頭にあって。ジブリのアニメで多少は頭にあるだけ。子供に子供とは思えない過酷な思考、言葉、行動を強いた無慈悲な戦後の仕方なかったで片付けられた口惜しさが滲む。2026/10/02
竹園和明
53
敗戦後、天涯孤独の身となり頼れる人が一人もいなくなった琴子は、生き延びる為に性別を偽り男の子として生きる事を決断。自分を捨て何者でもない一人の男児として荒廃した街を必死に生きて行く。戦争孤児。戦争という狂気に翻弄され、「これからどう生きるか」を子供が自分で考えなければならなかった壮絶な世界を描いた作品だ。また、軍国主義教育という面で戦争に加担する側にいた女性教師曽根の、敗戦後の苦悩も細かく描かれる。全体を俯瞰した描写から一気にフォーカスされる後半の2章が濃厚。誇り高き小さな魂の闘いを描いた、入魂の作品!。2026/09/09
ケイトKATE
34
『わたしの知らない子どもたち』は、西川美和監督自ら書いた映画原作小説で、戦災孤児の茅野琴子と新谷将吉、琴子の担任教師だった曽根文美子の視点から、戦争末期から敗戦直後の困難を生きる戦災孤児が描かれている。子どもの時に親を失うことは病気でも辛いものであるが、親を戦争で失うことは子どもにとって、突然心の拠り所を失い、心に深い傷を負ってしまうことである。悲しみを背負って必死に生きようとする琴子たちが、幸せになってほしいと願ってしまう。子どもたちが犠牲になる戦争を起こさない責任が私たち大人にある。2026/10/17
桜もち 太郎
22
秋に公開される映画の原案小説。敗戦直後、アメリカによる大量虐殺が行われた日本が舞台。疎開していた子供たちが東京に戻り行く当てもなくさ迷い戦争孤児となる。主人公の琴子は生き延びるために女子であることを隠し、少年として生きる。そしてもう一人は女性教師である曽根先生。戦時下は軍国主義に加担をした教育をし、戦後は価値観が崩壊し、身を落とす。戦争は取り返しもつかないほど人の心を変えてしまう。「その時はそうする以外になかった」とのちに為政者は言い訳をする。正しい戦争はない。いつまで愚かなことを人は繰り返すのだろうか。2026/08/09




