内容説明
古代の遺跡・酒船石の謎に迫る『三つ目がとおる』、国号「日本」が成立した背景を読み解く『火の鳥・太陽編』…古代史から近現代史まで手塚治虫の歴史観がにじみ出る漫画7本を収録。『古事記』研究の第一人者・三浦佑之が現代の歴史学から考察する解説とともにお楽しみください。
著者等紹介
手塚治虫[テズカオサム]
1928年、大阪府豊中市生まれ。「治虫」というペンネームはオサムシという昆虫の名前からとったもの(本名・治)。大阪大学附属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。『ネオ・ファウスト』など3作連載中の89年2月9日に胃ガンのため死去
三浦佑之[ミウラスケユキ]
1946年、三重県生まれ。成城大学文芸学部卒業、同大学院博士課程単位取得退学。千葉大学教授、立正大学教授などを歴任。千葉大学名誉教授。日本古代文学、伝承文学を専門とする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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keroppi
65
「火の鳥」、「弁慶」、「アドルフに告ぐ」等を抜粋で掲載し、歴史的な解説や手塚治虫の歴史視点について述べられている。手塚治虫の過去を舞台とした漫画は、常に弱いもの虐げられたものの視点から描かれている。史実や史料をベースとしながらも、そこに人間たちがいる。権力者への批判の眼差しがある。そして、ダイナミックなストーリーを構築する力。私自身、子供の頃、手塚漫画が歴史の知識を得たところもある。全集未収録の「風之進がんばる」が読めたのも嬉しかった。2024/04/14
鷺@みんさー
33
数ある手塚作品の中で、歴史観についてクローズアップした一冊。火の鳥から二編選ばれているが、題材の豊富さゆえさもありなん、というところ。「弁慶」がさくさくと名馬面の連続でわかりやすく、手塚らしいユーモアを交えつつ実直に泣ける。「後藤又兵衛」も面白い。手塚はいつも敗者の側から歴史を描こうとするという視点にふむふむ。それも火の鳥の目から見れば、長い長い地球のほんの一時の小さな争いなんだろうなぁ。それでもその時々の人々にグッと肩入れしてしまうのが人情ってもんよ。2025/05/23
ムーミン2号
14
『火の鳥 黎明編』(抜粋)、『三つ目がとおる』~「酒船石奇談」、『火の鳥 太陽編』(抜粋)、『弁慶』(抜粋)、『後藤又兵衛』(全編)、『風之進がんばる』(全編)、『アドルフに告ぐ』(抜粋)が収められ、三浦佑之さんの解説が各作品の後にある。解説は多少、専門的な部分もあるが、手塚さんがどういう視座で物語を描いているのかもしっかり捉え、述べられている。虚構(マンガ)に史実を織り交ぜる手塚さんの手腕の見事さに改めて感心させられると同時に、関連作品なども再読してみたくなる。2024/02/04
あた
8
手塚治虫の作品では、比較的新しい「アドルフに告ぐ」から古い作品も歴史の解決と一緒に楽しめる一冊。個人的には「三つ目がとおる」が一番好み。他のシリーズも読みたいと思わせる一冊です。2024/07/05
荒川ながれ
6
2024/1/30 初版 1,700円+税 いそっぷ社 著者は古事記などの専門家 1946年生まれ 手塚作品で成長した人だ。世代は違うが、わたしも「火の鳥」や「三つ目がとおる」で古代史に興味をもったひとり。手塚作品は奥深い教養に裏打ちされたことがわかる。「描かれるのは、敗れていった人たち、国家や権力に抗う者、時代に流されざるをえなかったふつうの人々だ」とあとがきにあった。2025/05/26