内容説明
気仙沼のリアス・アーク美術館には東日本大震災の「被災物」が展示されている。この展示に触発された著者が大阪で「被災物ワークショップ」を始めると、被災物を見た人々は思わず自らの記憶を語り出した。阪神大震災、幼い日の傷、亡くなった娘のぬいぐるみ、広島の経験…痛みでつながることで、当事者/非当事者の境界を越えて、命と記憶は語りつがれていく。「復興」の物語からはみだす、小さな“モノ語り”の記録。志賀理江子の撮り下ろし写真カラー16頁。
目次
1 終わりと始まり(「被災物に応答せよ」―第三者による記憶の継承という問い;モノ語り集1 ほか)
2 「モノ」語りは増殖する(「被災物」は記憶を解き放つ―記憶のケアとしての「モノ語り」;モノ語り集2 ほか)
3 氾物語―躊躇なく触る(リアス・アーク美術館に眠るもの;土の時間、水の時間―志賀理江子との対話)
4 恵比寿の到来(ナニカが海からやってくる;えべっさま、ようきてくれましたな ほか)
5 新しい祭りへ(南三陸集会+気仙沼への旅;エビスが語りて命をつなぐ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かりん
4
4:《被災物とそこから生まれる語り》リアスアーク美術館に展示される被災物には、語りの文章が添えられている。それは元の持ち主によるものではなく、被災物を前に湧き出てきたエピソードや言葉である。つまりはフィクションだが、被災物に圧倒的なリアリティを与えている。文筆家や音楽家などが自らも被災物を前に語るワークショップを開催。その活動を中心にまとめられた書籍である。震災に一つの真実があるのではなく、それに直面したり触れたりしたことで生まれる思いが大切という気づきを得た。風化を止めるにはむしろそれが必要なのだと。2024/03/08
いわな
2
「被災したモノ」について、そこから感じ取った「モノ語り」をするという内容。 ポイントは、実際に東日本大震災で被災しなかった人たちが、「モノ」を通して表現すると云うことだろう。 これにどんな意味があるのかはよくわからないが、「被災物」と云う言葉は、言い得て妙で、もっと対象として語られるべきだと思う。2024/11/09
るいな
1
本気で読んだら戻れなくなる2024/06/13
菊田和弘
1
被災物が恵比寿につながる不思議。私もまた被災物に触発されてモノ語りをしていました。「傷ついた記憶」をケアするかのように。それは人に備わった知恵なのかもしれません。被災物はモノ語りの呼び水でした。増殖して相手を欲するモノ語りは、人と人とをつないでいきます。亡くなった命を宥め、今ある命を祝うように。気仙沼にまた行きたい。リアス・アーク美術館に行きたい。何がくっついてきてもいい。私は私に訪れたモノ語りを伝えていけばいい。そんなことを思いました。2024/06/12
takao
0
ふむ2025/05/09