内容説明
パンデミックは何をもたらしたのか。家族で最も弱い立場に置かれた人々の、手さぐりと再生の軌跡をみつめた、ベテラン臨床心理士によるエッセイ。リアルなエピソードと実践経験から生まれた知見をもりこんだ、時代の荒波を生きぬくための必携書。
目次
第1章 KSという暗号
第2章 飛んで行ってしまった心
第3章 うしろ向きであることの意味
第4章 マスクを拒否する母
第5章 親を許せという大合唱
第6章 母への罪悪感はなぜ生まれるのか
第7章 「君を尊重するよ(正しいのはいつも俺だけど)」
第8章 私の体と母の体
第9章 語りつづけることの意味
第10章 むき出しのまま社会と対峙する時代
第11章 慣性の法則と変化の相克―一蓮托生を強いられる家族
第12章 現実という名の太巻きをパクっとひと口で食べる
著者等紹介
信田さよ子[ノブタサヨコ]
公認心理師、臨床心理士、原宿カウンセリングセンター顧問、公益社団法人日本公認心理師協会会長。1946年生まれ。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院勤務、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長を経て、1995年原宿カウンセリングセンターを設立。アルコール依存症、摂食障害、ひきこもりに悩む人やその家族、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待、性暴力、各種ハラスメントの加害者・被害者へのカウンセリングを行ってきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ネギっ子gen
60
【コロナ禍で、日本でも欧州でも家庭内で閉塞感が高まり、DV相談件数は激増した】「この国はあらゆる政策の下支えを家族に求めてきた」と説く著者が、家族で弱い立場に置かれた女性たちの手さぐりと再生の軌跡を描いた書。巻末に、主要参考文献一覧。<私は、何かを変えたい、変えなければ苦しくて生きていけないと訴えてカウンセリングにやってきた女性たちのことを、いつも念頭に置いていた。コロナ禍は彼女たちの変化を加速させた。空気圧が倍になるように、家族関係において溜まったものが、濃縮・凝縮されて噴出したかのようだった>と――⇒2024/09/02
フム
34
図書館本。長年家族をテーマにカウンセリングを行って来た著者が、コロナ禍という厄災が家族にもたらした変化や困難について書いた。 それは新しい何かというよりは、これまで芽吹いていたものが加速化して表面に現れたものだという。女性をめぐる状況や社会的な動きは進歩しているように見える。しかし、カウンセリングを通して突きつけられるのは、今どき?と言うしかないような現実。 厄災によって、今まで見過ごしたり、見てみぬふりをしてきたものがはっきり見えてくる。コロナ禍という厄災が遠ざかりつつある今こそ、それを忘れないでいたい2023/11/27
チェアー
7
コロナ禍で誰もが、何かしらの傷を被った。そのことをなかったこととして、終わったことをして忘れ去ってはいけない。傷ついたことを互いに認め合い、互いにケアすることでしか本当の前進は無い。もう元には戻れないのだ。そのことを正直に認めなければならない。そこからしか私たちの未来はない。 2023/11/25
る
6
コロナ禍によって家族内の問題が顕在化する一方で、まるで慣性の法則のように変化を拒む「理想の家族のあり方」や、時代に逆行するかの如く伝統的家族観を奨励する政策もあると指摘する。登場するのは架空の人物なのに質感がすごい。2023/12/09
Kooheysan
6
テーマは家族(主に母親と娘の関係)。コロナ禍を含む最近の厄災がもたらした、あるいは明るみに出したものについて。言葉にこだわる、いつもの信田さんらしい文章です。どことなくこれまでの文章よりも基本的なことから教えてくれている感じがして、個人的に結構おすすめな本です!…以下個人的メモ。★被害者が許す前に、加害者の謝罪が必要★親は絶対に子供を殴ってはいけない★自分を苦しめる相手・行動を名づけること★母性愛はイデオロギー★家族の被害と国家の被害は相似形★家族は素晴らしいというのは幻想★歴史は価値の変遷を含んだ物語2023/10/23
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