内容説明
ローティ論・プラグマティズムの新たな地平を開く1冊。国内の論争・国際的な紛争・戦争が絶えない今、人類がどのように「会話」をしうるか。その可能性をローティは古典哲学を乗り越え、プラグマティズムを通して提示している。朱喜哲は、ローティのみならず、ミサック、セラーズ、ブランダム等を通じ、そのローティの哲学を鮮やかな分析で解き明かした。
目次
分析哲学史の見直しとリチャード・ローティの立ち位置
第1部 ふたつのプラグマティズム―ミサック対ローティ(ニュープラグマティズムからの異議申し立て;「探求」か「会話」か)
第2部 規範性のプラグマティズム―セラーズからローティへ(分析哲学の規範的転回;セラーズの「規範性」概念を再考する;ローティにおける「理由と因果の二元論」とその克服)
第3部 「文化政治」とプラグマティズム―ローティからブランダムへ(「奈落の際で踊る哲学」としてのネオプラグマティズム;「文化政治」としての推論主義(一)ヘイトスピーチを分析する
「文化政治」としての推論主義(二)感情教育論を明晰化する)
“人類の会話”のための哲学
著者等紹介
朱喜哲[チュヒチョル]
1985年大阪生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。大阪大学社会技術共創研究センター招へい教員ほか。専門はプラグマティズム言語哲学とその思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buuupuuu
18
ローティを軸にして現代のプラグマティズムの議論状況を概観する。ローティは実践の内部にとどまって超越的なものを認めない。他方、現代の英米哲学の主流は自然主義である。そこで、現代的なプラグマティストたちは科学の優位性や因果性といったものを、超越的なものに訴えることなくどう捉えるのかという課題に取り組むことになる。そこではしばしば共同体的な規範というものが引き合いに出されることになる。規範は実践を拘束するものだが実践によって変化するものでもある。究極的な目標によらずに改良していける希望をここに見ることができる。2024/04/25
Bevel
4
思ったよりローティの話をしないのだなという感想。「21世紀のプラグマティズム」(ミサック、プライス、ブランダム)の文脈にローティを位置づけて、カルナップやセラーズで前提を明らかにし、真理や事実の復活や、統計的因果推論、差別などと整合させる。ローティ自身の著作同士の関係や議論の変化などは他の人の本に譲る感じ。金太郎飴的なところはあれど、いろんなことを論じていたローティが、すっきりした推論主義者として甦る感じが面白かった。ミサックとの比較を扱った第一章と、二つの規範性の両立の話が印象に残っている。2024/04/10