内容説明
大阪へ。東京からの転居、コロナ禍での先行きの見えない日々。寂蓼感と欲望。ミュージシャン・豊田道倫の生活とイリュージョンの往還からうまれた20篇の物語。
著者等紹介
豊田道倫[トヨタミチノリ]
1970年、岡山県倉敷市生まれ。大阪府豊中市で育つ。1995年、パラダイス・ガラージ名義の『ROCK’N’ROLL1500』でCDデビュー。それから、ソロ名義等で多数のアルバムを発表。2020年、25年住んだ東京から、大阪市内に転居。自主レーベル「25時」でCD、ZINE等を発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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@nk
44
ふと書影が目に留まり、そのまま発信元の書店(Web)へオーダーしたのは、 本の佇まいに何とも言えぬ香しさを感じたから。読み始めてすぐ、やっぱりだ…と思う。私の20代の大半は新世界や西成にあり、しかも著者のように私も音楽へ傾倒していた。本書に出てくる煙草屋のおばちゃんと女装の『彼』は、あのときの私が言葉を交わした人たちではなかろうか(…コロナ禍の頃が本書の主設定なので、もしかすると違うかもしれないのだけれど)。喫茶店や宿、ドヤ街やライブハウスの情景は、それこそありありと目に浮かべながら読み進めた。⇒2025/02/26
biwacovic
1
Webでの連載は時々読んでいたが、こうやって本になってみると未読のものも多かった。私小説的なものと、全然違う誰かの視点の小説が入り混じる。散漫な感じはせず、現実と幻想が交互に顔を出す感じが好きだ。特に好きなのは『眠剤入りラーメンを食べながら』『二〇二二年十月三十日の夜』『岸さん』など。2024/12/21
sucksuckhello
0
豊田道倫は多くの人が見逃すか、忘れてしまう日常のきらめきを文章にしてみせる。それは一見ソフトで肩肘張らないもののように見えるが、権威的なものに対する厳しい眼差しと、時代の流れに取り残されたものたちへの愛が丁寧に描写されていると思う。大阪万博のすぐ横にこんな世界があるんだということを忘れずにいたい。2025/05/07