感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイティ
32
偉大な英雄でなく「挫折の痛みやうんざりする日常の中でも、世の中に対する希望と人々に対する期待の糸を離すまいとした」韓国人12人のインタビュー集。見過ごせない衝動や信念に突き動かされ、していることを声高に誇らず、何でもないことのように語る。「人が決めることは誰であっても間違った決定でしかない」「考えるとは抵抗し拒否する、懐疑的になること」「悪いことは悪いことだけでなく、多彩な要素で成り立っている」「邪悪な敵でなく無関心との闘い」など、個々の人生経験を通じて体感した重みをが染み入る、とても有意義な読書だった。2025/01/03
星落秋風五丈原
29
「どうしてそこに行ったのかって? 三人の子どもの父親だからです」はセウォル号沈没事故の際に参加した民間ダイバーの妻のインタビューだ。韓国のみでなく、誰もがあの事故を、船が沈みゆく様を眺めているしかなかった。日本からの援助も断った韓国は、その後も失政を繰り返し、深海に沈んだ遺体を引きあげたのは、国で組織した団体でなく、ボランティアの民間ダイバーが殆どだった。潜水士の危険規定を大きく越えてまでも少ない人数で潜り続けたために事故死した人もいた。インタビューの相手の夫も、心臓発作で亡くなった。2025/03/26
にゃにゃころ
20
リアルキムサブ、かっこいいなぁ。またドラマ見たくなった。いちばん衝撃だったのは、セウォル号沈没での遺体を引き上げる民間ダイバーの話。自分を犠牲にしてまでも成し遂げようとする思いの大きさに驚くばかり。どの話も、秘められてはいるものの、正義に対する熱さを感じる。正義感が強く、情の深い韓国のイメージそのままだった。日本は、こんな状況になっても声を上げない、選挙にも行かない、何をやっても無駄とばかりに冷めてしまってる。声を上げることによって、上級国民であろうときちんと裁かれる韓国が羨ましくもある。2024/12/22
かめぴ
14
2013〜18年ハンギョレ新聞に掲載されたインタビュー記事。セウォル号沈没時に遺体を引き上げたダイバーの夫を、心痛による心臓発作で亡くされた妻の話…一発目から胸痛すぎ。『浪漫ドクター キム・サブ』(韓国で大ヒットのドラマ)にはモデルがいたのか。映画監督から、レズビアンの娘を持つ母親、思ったより深刻な内容に胸が詰まる。読んで良かった〜。2025/04/09
ヘジン
11
新聞連載のインタビュー集。セウォル号の遺体収容が原因で亡くなった潜水士の妻、自身の健康を犠牲にして激務をこなす外傷外科医のスペシャリスト、大統領に逆らい辞職に追い込まれた公務員など、胸に重くのしかかる話も多い。映画『リトル・フォレスト 春夏秋冬』の監督のイム・スルレ、『国選弁護人 ユン・ジンウォン』(本書をきっかけに再視聴した。地味だけど佳作)の原作・脚本担当のソン・アラムの話も興味深かった。偶像化を拒み、華々しさとは無縁の韓国の人たちの静かな底力を感じ、とても読み応えがあった。おすすめ。2024/08/01
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