内容説明
移民は二通りの生き方を選択させられる。日銭を稼ぐ労働が許されているセイカツシャか、文化的な名誉だけを重んじるよう求められているヒョウゲンシャか。ある日、セイカツシャである主人公は、勤めるドライブイン・レストランにやってきた刑事から「テロの予告があった」と知らされる。その予告日は偶然にも、ヒョウゲンシャの互助組織であるトモダチのパーティが開かれる日でもあった。突然世話することになったノラ犬、騒擾の予告、深夜の乱痴気騒ぎ、それぞれが絡み合い行きつく結末は?
著者等紹介
高山羽根子[タカヤマハネコ]
1975年富山県生まれ。2010年「うどん キツネつきの」で第一回創元SF短編賞佳作に選出され、デビュー。2015年、短編集『うどん キツネつきの』が第三六回日本SF大賞最終候補に選出。2016年「太陽の側の島」で第二回林芙美子文学賞を受賞。2020年「首里の馬」第一六三回芥川龍之介賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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ケンイチミズバ
94
近所のコンビニで働くカルキさんは日本人よりもはるかに 優秀だと感じることがある。いや、むしろ日本人大丈夫かと思うこともある。この作品の私は日本語では口にすることが憚られる名前のようで質の悪い客によく絡まれてしまう。ジム・ジャームッシュの映画でドイツ人の客から名前はヘルムートだよと言われたタクシー運転手が、お前は帽子なのかと爆笑するシーンもあった。迫害や弾圧から逃れ日本では死なない程度には生きていられる私。迫害や弾圧よりはましな程度の差別や制約に耐える私。ある出来事を境に生きがいという光が私にも見えて来る。2023/07/26
クプクプ
74
高山羽根子さんの本は初めて読みました。この本は電子書籍を紙の本にした作品です。SNSや移民の問題、「セイカツシャ」と「ヒョウゲンシャ」など、見事にひとつの世界が出来上がっていました。私もサラリーマンから、表現者になりたいと、たまに考えるので、著者の狙いは、良いとおもいます。ただ、面白すぎて、高山羽根子さんに、心を支配されてしまいそうなので、私はけっして再読はせず、この本とは距離を置こうと思いました。取り扱い要注意の作品。2023/07/20
fwhd8325
67
140ページあまりの短編ですが、ゾクゾクします。高山さんは相性のいい作家さんで今回も期待を裏切りません。もう目の前にある近未来であり、おそらく、似たような社会が待っていると感じさせる。恐怖に近い感情なのですが、それすらも体験として身体に入ってくるようです。2023/09/10
とよぽん
50
高山羽根子さん、すごい!「この国」という呼び名で、近未来の日本を移民の視点で描いている。フィクションという方法を使わなければ書けないことだと思った。「この国」の矛盾、冷たい精神性。祖国を脱出して「この国」に移民として生活の場を求めたのに、数々の制限を与えられて生きるのは幸せとはいえないだろう。「ボードゲームのボード返し」のたとえが印象的だった。国境、人種や民族、国家、社会、人権、連帯、いろいろな要素を中編の作品にちりばめつつ、結末へ。表紙の装画が女性と何を描いたものか、後半になってようやくわかった。2023/08/19
かず
23
★★Audible。途中挫折。2023/12/21
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