内容説明
四年ごとに開かれる会社の代表選挙。一回目の投票は票が散らばったため、上位二名による決選投票が行われることに。現社長でもある藍井戸氏は手堅い保守層から支持を集め、対抗馬の黄島氏は吸収合併した会社のプロパー社員のリストラ等過激なスローガンを掲げる。接戦が予想される中、両陣営共に動向を窺うのは、一回目で三位につけた緑山氏の支持者たちであった。うどんを愛する主人公たち緑山陣営へ迫ってくる運動員からの圧力、上司からの探り…。社内政治の面倒臭さをリアルにコミカルに描く。
著者等紹介
津村記久子[ツムラキクコ]
1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第二十一回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第一四〇回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さてさて
324
『私自身はこの地域の出身ではないけれども、夜型でうどんが好きだし給料は減らされたくないし…という理由で緑山さんを支持している』。そんな思いの中に主人公を務める小林の視点で描かれた『会社の代表を決める投票』の様子が描かれたこの作品。そこには、会社員なら誰にとっても他人事では済まされない”社内政治”の舞台裏が描かれていました。美味しそうな『うどん』が”社内政治”のきな臭さと、面倒臭さを中和するこの作品。極めて津村記久子さんらしい、少し斜めに構えた視点からのサラリーマン痛快娯楽劇をそこに見た、そんな作品でした。2023/07/10
みーまりぽん
170
お仕事・・・といふか、職場モノの中編小説。電子書籍として刊行されたものの紙化で、外観は小冊子っぽひ。 4年ごとに行われる会社の代表、その決選投票に向けての各派陣営の(闇)活動をいつもの淡々とした筆致で描いている。 てか、舞台となる「社之杜社」という社名を見たときに、「大林大森林公園」を思い出して、同じネーミングセンスじゃなひか!と笑ってしまったのだった。2023/12/03
うっちー
167
何か淡々と選挙が進む感じ2023/09/08
hiace9000
160
ポケッタブルでコンパクトなボリュームでありながも、津村さんの出汁を効かせて味わわせ、つるつると読ませる変則お仕事小説。社内政治に翻弄されまいとするうどん好き仲間の多い緑山陣営。第三勢力ゆえに対立する他陣営からの圧力、探り、囲い込み、連れ出しなど"リアル選挙戦あるある"のギスギスしたきな臭さを、「うどん」の風味とのどごしで中和させつつ描く、決戦投票までの受難の数週間。主人公こばちゃんのゆるいようでニュートラルな信念は、読み手の立ち位置や視点によく絡まる。気持ちよく、またほど良く心を満たすこの一杯を是非!😊2023/07/29
ネギっ子gen
146
【今の状況を面倒だからってやり過ごして、なるようになれって放り出してしまったら、それはそれで自分自身は後悔する】4年ごとに開かれる会社の代表選挙。現体制は保守層から支持を集め、2番手候補は過激なスローガンを。両陣営共に動向を窺うのは、3位候補支持のうどん好きな社員たち。運動員の勧誘、ハラスメント手前の圧力などなど。会社の派閥争いに巻き込まれ消耗する悲哀が、コミカルに描かれる。前作から一転して、この薄さ。軽さ。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」というフレーズが浮かぶ。動きが遅いパソコンの描写には、既視感が――。2023/08/13