内容説明
欲しいと思ったものに手を伸ばして、いらないものは切り捨てる。よく分からないことは放置でいいのよ。その選択と放置を続けることが人生なんじゃない?「俺らマブになろうぜ」40歳の波那の目前に現れたのは、上下金色でかためた53歳の義母・張子だった。出会ったその足で飲みからカラオケにはしご、昼休憩に美容整形、勢いで韓国へ弾丸旅行、と張子に付き合っていく。そのうち、嫁姑を超え、同じ女性として、人間として改名、結婚式の有無、子供を持つことから始まり、お互い夫にも息子にも話したことのない過去や心に残るわだかまりと後悔、人生の選択についても語り合うようになる。
著者等紹介
金原ひとみ[カネハラヒトミ]
1983年東京都生まれ。2003年に『蛇にピアス』ですばる文学賞を受賞しデビュー。翌年同作で芥川賞を受賞。10年『TRIP TRAP』で織田作之助賞、12年『マザーズ』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、20年『アタラクシア』で渡辺淳一文学賞、21年『アンソーシャル ディスタンス』で谷崎潤一郎賞、22年『ミーツ・ザ・ワールド』で柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
194
金原 ひとみは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 ライトな装幀なのでライトな内容かと思いきや、マツケンサンバ的な義母、考えさせられる重いテーマで、どう展開するのかと期待していたら、最期は失速しました。 https://publishing.unext.co.jp/book/title/4cOfgNFl1mZHbi6yOm9Tio 2025/09/15
さてさて
164
『サイクロン掃除機のような吸引力で人を惹きつけ自分のフィールドで踊り散らかさせるような人』 そんなキョーレツな印象の義母の存在に圧倒される主人公の水木波那。そんな波那が義母・張子と出会った先の日々が描かれていくこの作品。そこには、張子のあまりのキョーレツさに読者も圧倒される物語が描かれていました。次から次へと露わにされる張子の生態に慄く他ないこの作品。そんな母親の対極にあるような蹴人の存在に同情の思いが湧き上がりもするこの作品。金原ひとみさんのノリに乗った圧倒的な筆の力に酔う他ない、素晴らしい作品でした。2025/07/25
hiace9000
131
100min.ノベラと侮れぬアッパー&エネルギッシュかつディープな最新作。今作金原作品自体の"神アプデ"かも!?と読了。物語に強烈な駆動力を与える張子の存在につい目が行きがちだが、嫁姑・夫婦・友人ー身の回りに蔓延る普通の生や性の問い無しがテーマ。その規範がもたらす苦悩や絶望、それに真っ向から向き合い、乗り越えるアウトロウな浮遊感は、まさにサーフィンの爽快感と共通するようにも思え、金原さんの「アンチ普通」ここに極まれり!なのだ。死にたさを持ちつつも、生きたさを認めシフトするささやかな欲望―肯定したいと思う。2025/08/31
しゅう
104
パワフルな姑、張子とマブになる波那。タメ語、呼び捨ては当たり前。テンション上げ上げで盛り上がるふたり。けれど友人エンゾを交えての3人の会話には時に哲学的な色を帯びる。そして、張子にも波那にも痛切な過去があった。息子に対して複雑な感情を抱く張子と出産に対して思いを抱く波那。親子関係について考えさせられた小説だった。2025/09/20
pohcho
70
28歳の蹴人と結婚した40歳の波那。初顔合わせに現れた蹴人の母・張子は全身金色のいでたち。ぶっとんだ姑に気に入られた波那は、張子からいろんなところに誘われて、かけられた言葉が「俺らマブになろうぜ」嫁姑がいつしかマブダチになるというお話だった。常識人の夫がひたすらオロオロと心配してて可笑しかった。張子も波那もそれぞれにつらい過去を抱えているのだ、今が幸福で本当によかった。知らない料理がいっぱい出てくるので、ググりながら読む。とても面白かった。 2025/08/21