内容説明
欲しいと思ったものに手を伸ばして、いらないものは切り捨てる。よく分からないことは放置でいいのよ。その選択と放置を続けることが人生なんじゃない?「俺らマブになろうぜ」40歳の波那の目前に現れたのは、上下金色でかためた53歳の義母・張子だった。出会ったその足で飲みからカラオケにはしご、昼休憩に美容整形、勢いで韓国へ弾丸旅行、と張子に付き合っていく。そのうち、嫁姑を超え、同じ女性として、人間として改名、結婚式の有無、子供を持つことから始まり、お互い夫にも息子にも話したことのない過去や心に残るわだかまりと後悔、人生の選択についても語り合うようになる。
著者等紹介
金原ひとみ[カネハラヒトミ]
1983年東京都生まれ。2003年に『蛇にピアス』ですばる文学賞を受賞しデビュー。翌年同作で芥川賞を受賞。10年『TRIP TRAP』で織田作之助賞、12年『マザーズ』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、20年『アタラクシア』で渡辺淳一文学賞、21年『アンソーシャル ディスタンス』で谷崎潤一郎賞、22年『ミーツ・ザ・ワールド』で柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さてさて
147
『サイクロン掃除機のような吸引力で人を惹きつけ自分のフィールドで踊り散らかさせるような人』 そんなキョーレツな印象の義母の存在に圧倒される主人公の水木波那。そんな波那が義母・張子と出会った先の日々が描かれていくこの作品。そこには、張子のあまりのキョーレツさに読者も圧倒される物語が描かれていました。次から次へと露わにされる張子の生態に慄く他ないこの作品。そんな母親の対極にあるような蹴人の存在に同情の思いが湧き上がりもするこの作品。金原ひとみさんのノリに乗った圧倒的な筆の力に酔う他ない、素晴らしい作品でした。2025/07/25
hiace9000
107
100min.ノベラと侮れぬアッパー&エネルギッシュかつディープな最新作。今作金原作品自体の"神アプデ"かも!?と読了。物語に強烈な駆動力を与える張子の存在につい目が行きがちだが、嫁姑・夫婦・友人ー身の回りに蔓延る普通の生や性の問い無しがテーマ。その規範がもたらす苦悩や絶望、それに真っ向から向き合い、乗り越えるアウトロウな浮遊感は、まさにサーフィンの爽快感と共通するようにも思え、金原さんの「アンチ普通」ここに極まれり!なのだ。死にたさを持ちつつも、生きたさを認めシフトするささやかな欲望―肯定したいと思う。2025/08/31
pohcho
64
28歳の蹴人と結婚した40歳の波那。初顔合わせに現れた蹴人の母・張子は全身金色のいでたち。ぶっとんだ姑に気に入られた波那は、張子からいろんなところに誘われて、かけられた言葉が「俺らマブになろうぜ」嫁姑がいつしかマブダチになるというお話だった。常識人の夫がひたすらオロオロと心配してて可笑しかった。張子も波那もそれぞれにつらい過去を抱えているのだ、今が幸福で本当によかった。知らない料理がいっぱい出てくるので、ググりながら読む。とても面白かった。 2025/08/21
竹園和明
39
尖りを抑え気味でもイズムはしっかりキープ!。…姑と嫁の間柄ながらマブになった張子と波那。夫の蹴人は優しく大人しいが母親張子は強烈遊び人風。だが波那は、その懐の深さに惹かれ自分の壮絶な過去を吐露する。豪放磊落な張子だが、張子には張子なりに積み重ねて来た歴史があり幅広い人間関係を構築している。そこに魅了された波那はこれから先の将来に光を見出せるのか。重たい十字架を背負って来たが、張子と蹴人によって少しずつ変化して行く波那。躍動感溢れる傑作『ナチュラルボーンチキン』に似た質感の、ライトな部類の金原作品でした!。2025/08/02
olive
32
ド派手なのは身なりだけじゃない姑の張子。出会ったその足で飲みからカラオケにはしご、昼休憩に美容整形にと嫁を誘うチョー行動派。大阪のおばちゃんに負けずのド派手さと口八丁手八丁なんだけど、”オカン”という名のキャラじゃない。張子は張子。”オカン”じゃない!なにが凄いって!オカンキャラに描こうと思えば簡単だと思うのに、個人をブレないで描いてる。それもそのはずこの作品...。嫁姑、夫婦、親子を越え個人対個人で付き合おう意味を問うているもの。先日読んだヤブノナカとは違う面白さがあり、読めばスカっと爽快になる一冊2025/08/28