内容説明
映画化・山本周五郎賞受賞『平場の月』、直木賞候補『よむよむかたる』に続く―朝倉かすみが描く“老いと生”。わたしは生き生きしなくなった。「生き生き」とは正反対のありさまである。だれだったか「生き生き」の反対なら「死に死に」だろうと冗談口を叩いたことがあったが、まさにそのような状態だった。わたしは「死に死に」と日を送っていた。日雇い労働、シングルマザー、天涯孤独…幸せかどうか分からないけど、生まれてきたから生きている。明日への諦念と今日への執念を抱える人々の生きざま。
著者等紹介
朝倉かすみ[アサクラカスミ]
1960年北海道生まれ。2003年「コマドリさんのこと」で第37回北海道新聞文学賞を、04年「肝、焼ける」で第72回小説現代新人賞を受賞し作家デビュー。09年『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞、19年『平場の月』で第32回山本周五郎賞を受賞。24年『よむよむかたる』が第172回直木賞の候補作になる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
124
朝倉作品はなぜか『昭和』を感じる(当方比)そこでのこのタイトルだ(好み)どんな不穏や現実があるのだろう・・と楽しみに読み始めた。6話から成る短編集だったかぁ。「ずっとのおうち」が強烈な1話目『令和枯れすすき』これはインパクトがある。好みは『みんな夢のなか』私も時々、これは夢だったりして・・夢だったらいいな・・って思ったりした事があったよ(泣)2025/06/23
のぶ
82
日雇い派遣で今日だけをつないで生きている「わたし」が受け継いだ「ずっとのおうち」のバトン。切実で希望のカケラもない話なのに、なんでこんなに心が凪ぐのだろうか。こういう希望のない高齢者が向き合う「死」の問題が続いていく短編集なのかと思っていたのだけど、主人公たちは少しずつ若い世代へと移っていく。「今」を生きるのに精いっぱいで、明日を夢見ることさえ忘れている人の、それでも今日からつづく明日のために一日ずつ扉を閉じて生きていくあなたとわたしの物語。何か感じる所の多かった作品集でした。2025/05/15
Ikutan
60
何の前知識も無く読み始め、『令和枯れすすき』ののっけから、いきなり衝撃な内容にたじろぐ。日雇い派遣の主人公が、現金受け取り時に、派遣会社の事務所で出会った風変わりなあの人。彼女が話す『つっとのおうち』とは。五つの短編は、日雇い、早期退職、引きこもり、離婚...。コロナ禍不安感を引きずったまま、ギリギリの暮らしで、ままならない日々を送っている人たちの物語。座学の五教科は苦手だけれどそれ以外はそつなくこなす芙実のお話『非常用持ちだし袋』がよかった。印象に残ったのは、『令和枯れすすき』。これは衝撃的だった。2025/06/19
pohcho
60
5編の短編集。離婚、一人暮らし、コロナ、雇止め、日雇い派遣、希望退職、介護など、いろんな苦しい状況が前提となっている物語。「令和枯れすすき」の「ずっとのおうち」が印象的。「自分のタイミングで死ねる場所があれば最高」には同意するが、徹底するのは難しい気も(続きが気になる・・)「非常用持ち出し袋」の芙実ちゃん、かわいかった。ずっと夢の中にいる」という感覚もわかるような気がする。いろいろあるけどそれでも生きていく。体温低めなのが好ましい短編集。2025/05/20
hirokun
53
★3 正直なところ、私にはよく理解できない短編集だった。自分が体験したことのない世界を淡々と描いており、現代社会の様々な階層を垣間見ることが出来た為、見識が拡がったのかも知れないが、何を狙いとした作品なのかは、私の理解力不足もあり不明。2025/05/30