内容説明
1995年6月4日、奇しくも同じ日に起こった“事件”により、49日間、一人きりでの軟禁を余儀なくされた9歳の二人の少女の痛ましい過去と、その20年後を描く。小学校の同級生だった二人がたどった数奇な運命が、さながらDNAの二重らせんのように交錯する。ヒロインの一人、チョン・ヨヌは9歳のとき、何者かに誘拐・監禁され、49日目に無事、保護されたが、犯人は見つからないまま時効になった。誘拐犯がヨヌの声や写真など、一挙手一投足をメディアに送り付けていたため、ほぼ全国民が事件の細部まで知っているのに、当人は記憶を失い、ただ底知れぬ恐怖だけを体が覚えているという奇妙な状況が生じた。もう一人のヒロイン、ユシンの事件は自身が記憶を封印したせいで、その真相は誰も知らないまま。失われた記憶を取り戻すという核心部が徐々に明らかになっていくが―。韓国人女性作家の新星が放つサイコサスペンス中編。
著者等紹介
チョンミジン[チョンミジン]
1983年生まれ。韓国の名門国立大学、慶北大学校で国語国文学を専攻。卒業後、アニメーションや映画の脚本家として頭角を現した。子供向け絵本作品でキャリアを積んで評価を得て、作品は中国や台湾、フランスで翻訳出版されている。現在はチェコ共和国の首都プラハで、大人向けのミステリーを中心に作家活動に取り組んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sayuri
101
韓国人女性作家によるサイコサスペンス。根底にあるテーマは再生だが猟奇的な展開がスリリングで常に緊張感を伴い背筋が寒くなる。1995年6月4日、別々の場所で起きた二件の軟禁事件。被害者は同じ小学校に通う9歳の少女、チョン・ヨヌとユシン。無事に生還した二人だったが軟禁中の記憶を失ってしまう。ヨヌの軟禁シーンは息苦しさを覚えサイコパスな誘拐犯に震える。封印していた辛い記憶が蘇り、明らかになって行く真実から目が離せない。合間に挟まれる挿絵も不気味で恐怖が倍増する。この物語を面白いと言うと語弊はあるが十分楽しめた。2021/02/08
鱒子
69
ふたりの9歳の少女の交錯する運命がテーマ。サイコサスペンスもの。各章のタイトルが興味深く、目次だけで既に不安でいっぱい。挿絵付きの本に慣れていないので、最初は戸惑いました。しかし挿絵も含めてひとつの作品として仕上がっています。2つの物語が重なることによって厚みが出ています。2021/02/09
ゆきらぱ
27
不気味で恐ろしい話 みんな知ってる、みんな知らない、の意味がわかり、なるほどとなった。怖いけれど止められない。翻訳も良かった◎2025/03/25
アマニョッキ
22
最初の2章が秀逸。ここまでタイトルとリンクした哀しいく恐ろしい物語が書けるのかと純粋に感動した。記憶というものの恐ろしさ、ヒトの生命力の逞しさ、人間の浅ましさ、いろんなものがつまった作品だと思う。ちょっと苦しい展開もあったけれど、作者の伝えたいことは充分すぎるほど伝わったよ。2024/12/11
すけまる
20
読み友さんがおススメしていた韓国のサイコサスペンス。監禁事件について、みんな知ってるのに当事者である自分だけ知らないという描写は初めてでしたが、それもある意味でまた別の恐怖だなと知った。挿絵もこの本のポイントでした。2021/04/21