感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
65
ウクライナ緊急支援という事で、当地出身の作家ブルガーコフの作品を収録した一冊。『巨匠とマルガリータ』があまりにも壮大すぎる為、文豪めいた作品が多いのかと思ったが、小品が中心となっている。興味深いのは「自伝」や「モルヒネ」といった自伝的な作品群。特に「モルヒネ」とかは自分の体験を元にしているので、ドフトエフスキーと賭博を思わせる部分も。他にも当局を皮肉った「定まらぬ住まい」や「十三番地エリピト・労働者コンミューンのアパート」を読むと、ソ連相手によく反骨通せたなと。作家の様々な一面を見せてくれる一冊でした。2022/06/13
スターライト
5
ブルガーコフはいつか読まねばならない作家だとは思っていたのだが、今の今まで読めずにいた。本書を購入することがウクライナの支援にもなると知り、買って読んでみた。「モルヒネ」と「偽善者たちのカバラ」を除けば、短い作品で構成。ロシア革命とその後のスターリン体制下での庶民の様子を垣間見ることができ、革命によって人々の暮らしはよくなるどころかひどくなっていたことがこれらの風刺作品でわかった。自伝的要素もあるという「モルヒネ」は、モルヒネ中毒となって人生を終えていく姿に、寂しさを感じた。2022/10/20
Jessica
4
最近編集された本らしく、読書メーター内にこの本を見つけることが大変でした。ウクライナの国旗がカラーブロックとしてデザインされ装丁してある綺麗な本です。ブルガーコフはウクライナ出身のロシア語作家。本書内には「モスクワに住んでいる~さん」のような、思った以上にロシア感が強い作品が多く、なおさらこの戦争の意義が分からなくなりました。2022/11/11
lico
2
『楽園への階段』や『故人の冒険』を読んで再度感じたのだがブルガーコフの書くロシアの市民は軽妙でユーモラスで、ゴーゴリの鼻からブルガーコフは生まれたという言葉もうなずいてしまう。『偽善者たちのカバラ』は舞台はフランスだがどうしてブルガーコフのいたソヴィエトを連想してしまう。モリエールは自分の人生が自らの行いにより滅茶苦茶になり絶望を抱きながらルイ十四世の前に出てくるのだが、王からかけられる言葉とその後の絶望が、ブルガーコフの時代のソヴィエトへの恐怖と諦めへと重ね合わされているように感じて非常に面白かった。2022/11/03
まどの一哉
1
ウクライナ危機にあたり、緊急応援出版として企画されたウクライナの大作家ブルガーコフの作品集。本書の売り上げはウクライナ大使館へ寄付されます。 文化科学高等研究院出版局は知らなかったが、三和酒類の冊子「iichiko」を出しているところか。もとよりブルガーコフは私の最も敬愛する作家で、迷わず購入した。2022/06/27