内容説明
土の中から破片が発掘され、修復され、展示されるまでには、いくつもの厄介な問題が存在する。欠損の意味、修復の介入度合い、修復箇所の判別、復元してわかること見えなくなるもの、現代人の発想の危うさ…。考古遺物、考古学に潜む迷宮を、縄文土器の修復という営みから、また世界の事例から、人類学者と修復家が探究する。
目次
序章 修復の世界への招待(発掘現場の出土品から展覧会の展示品へ;出土したときの国宝土偶;出土品への修復という介入;考古遺物の修復と美術品の修復;修復における自由裁量の幅;出土品、修復家、監修者;結果を形にしなければならない修復という仕事;修復とはそもそも何なのか)
第1章 考古遺物の修復の現場から(文化財の保存修復とは何か;縄文土器の修復;考古遺物の複製そしてレプリカ)
第2章 修復からみた縄文土器の「わからなさ」(縄文とともに現代を生きる;修復における厄介な問題;「向こう合わせの」造形;現れてくるものを受け入れる;縄文土器修復の目指すところ)
第3章 遺物の修復について人類学者が考える―断片・経年変化・複製・展示(修復とは何のために何をすることなのか;断片より完形を偏重すること;経年変化とアンチエイジング;実物をとりまく複数の複製;保存だけでなく展示のために;修復は単品では完結しない)
著者等紹介
古谷嘉章[フルヤヨシアキ]
1956年、東京都生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。九州大学名誉教授・特任研究者。文化人類学(主たるフィールドはブラジル)
石原道知[イシハラミチトモ]
1965年、熊本県生まれ。武蔵野美術短期大学卒業。考古資料の修復・複製の会社で勤務後、武蔵野文化財修復研究所を設立。東京藝術大学の非常勤講師として材料技術論、埋蔵文化財土器修復を担当。重要文化財、東山遺跡出土瓦塔瓦堂、道訓前遺跡出土縄文土器、上福岡貝塚出土土器修復。文化財保存修復学会、日本文化財科学会、日本陶磁芸術教育学会、特定非営利活動法人文化財保存支援機構会員。縄文コンテンポラリーアート展(船橋市飛ノ台史跡公園博物館)参加
堀江武史[ホリエタケシ]
1967年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。現在、文化財修復・複製、縄文遺物と現代美術の展示などを手掛ける府中工房主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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