内容説明
今を生きるアイヌの姿を、一体、どれくらいの人が思い描くことができるだろう?教科書に載っているのは、伝統的な民族衣装をまとった姿だけ。北海道を舞台にしたドラマにも出てこない。無知、無理解、そして差別が見えにくくなる社会の仕組み…。アイヌをとりまく「もや」の正体を、北原モコットウが徹底考察!「アイヌに会ったことがない」、それって本当ですか?わたしたちの存在、見えてますか?令和に生きるアイヌたちの姿を田房永子が漫画で描く!
目次
第1章 言い出しにくいんです
第2章 差別・ステレオタイプ
第3章 アイデンティティ わたしらしさとアイヌらしさ
第4章 マジョリティの優位性
北原モコットゥナシ×田房永子 特別対談
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
70
「アイヌ」を一つのテーマとしながら、それに留まらない普遍的な視点・視座がある。日頃、何気なく使っている言葉を、考えてみるきっかけになる。マイノリティとマジョリティを再考する。意図的な差別は、ある意味において分かりやすい。しかし、意図しないものや、意図的な差別を暗黙の了解としてしまうことの意味も考える。そんな大きなことを、伝わりやすく書かれているので、これをきっかけに深めていきたい。2024/02/14
あたびー
45
挿入漫画のホンワカした雰囲気とは裏腹な、痛いところをグサグサ突いてくる内容が辛くて、読了に長い時間がかかってしまった。アイヌ対和人だけでなく、様々な差別について解説されているのだが、自分のしてきたこと話してきたことが差別的であったことは無いかなど後ろを度々振り返りながら読んだ。特に過去に端を発する差別を椅子に例えた話には唸らされた。過去に誰かの足の上に置かれた椅子に何も考えず座っているとしたら、その椅子を置いたのは自分でなくとも無関係とは言えない。その椅子の存在を否定したくない。取り除く行動がしたい。2024/02/28
鷺@みんさー
44
あーもう、「差別に関わる難しい専門用語を、平易な表現と具体例で分かりやすく説明」されていて、たくさん目から鱗ぽろぽろ落ちたのに、今まであまりにも無関心・無知だったがゆえに、内容が咀嚼できない。「例えば知人が座ってる椅子の脚が、アイヌの人の足を踏んづけているとする。そうしたらあなたは、踏んづけてますよ、痛そうですよ、くらいは言うだろう」という喩えが一番わかりやすかった。更に私なりの解釈を加えるなら、言われた人も「あっ、ほんとだ!でもあなたが退いてくれないと、場所がなくてこの椅子から降りられないんです」かな。2024/05/16
たまきら
41
沖永良部出身の祖父は出身地を教えずなくなり、家族は死後新聞記事で知った親戚の連絡があって初めて知ったと聞いたことがあります。「土人」という言葉を知ったのは中学生の時。その定義に祖父が入ると知った時の世間への、祖父への怒り。今の自分を形作るもののいくらかは、あの時生まれたと思っています。世界は偏見の固まりだけれど、愛も憎悪もそこから生まれるけれど、私は前者を伝える者でありたい。だからこそ、学び続けないといけない。声をあげ続けないといけない。全てはあっという間に風化してしまうのだから。2024/07/15
ぽてちゅう
26
自分のルーツって知ってる?母方の曾祖母くらいが私の限界。なので?アイヌなどマイノリティの問題ではマジョリティ側にいて、マイノリティ側の意見に「じゃあ、どうすればいいの?」ともやもやします。この本で特筆すべきは、もやもやに対するワクチンを用意してくれているところ。例えば「みんなでアイヌを知ろう」という文言。みんなって誰?知ろうって誰が誰を?上から目線では?と無意識に使っている言葉に注意を、また「マジョリティの優位性」の章では、当たり前と思っている特権に気づきを促してくれます。少し靄が晴れる読書になりました。2024/10/26
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