内容説明
存在を可視化する。部落女性9人による生きるための実践と思想。部落女性の声が聞こえないとしたら、それは聞いてこなかったからだ。被差別部落をルーツに持つ女性たちが、それぞれの研究や活動現場から「部落」を語り直す、これまでなかったフェミニズムの書。
目次
第1章 部落女性の「不可視化」とフェミニズム―レイシズムとしての無関心
第2章 祖母、母、わたしと婦人水平社の姉妹たち
第3章 私から、われわれ、そして私へとつながる物語
第4章 私が生きのびるための思想・生活・運動
第5章 私たちはここにいる
第6章 「食」の記憶に浮かびあがる部落女性たち―ある皮なめしのムラの聞き取りから
第7章 地域・コミュニティにとって「当事者」とは誰か?
第8章 私たちが部落を語るために―部落に生きる者たちの系譜
第9章 不可視化への歴史的抵抗、主体と権利の奪還
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
venturingbeyond
28
近大人権問題研究所の熊本先生を編者とする論文集。“Black Feminism”と「部落フェミニズム」ということで、もちろん韻を踏みたいのではなく、部落解放運動に内在する家父長制やマチズモなどの男性中心性とフェミニズムに内在する階級や学歴による偏向性からこぼれ落ちる「部落女性」の生活経験にスポットライトを当て、そのインターセクショナリティが内包する問題を8つの論文と編者によるまとめ兼解説で考える構成となっている。解放運動が内包する抑圧性や権力性を批判しつつ、差別解消を展望する一冊。2025/08/04
チェアー
9
「アイヌがまなざす」(石原真衣、村上靖彦、岩波書店)を読んだ時と似た感覚を持っている。当事者性。そこに自分はどう参加すればいいのかわからない。身の置き所のなさ。安易に流入することは許されないし人間としてすべきではない。同情や消費の対象ではない。ともに生きていく人間として、どう自分の加害性を理解すればいいのか。一分一秒ごとに増す自らの加害性をどう克服して、マイノリティに接すればいいのか。それを考えた時、何やら絶望的な匂いすら感じるのである。それほどまでに差別は根強く、抗うことは難しいのだ。 2025/08/14
slowpass
7
世間一般的に個人的な回復とは、現状の社会環境で心身が「不適応」にならなくなること。だが社会環境によって差別や抑圧を受けている存在にとって、それらを我慢したり意識を逸らして別の楽しみを見つけてやっていければそれでいいのか。それは明らかにその人から力をうばい、ゆがませている。ごまかしではなく、世界に対する新鮮な心もちをその人が取り戻すことが重要とおもう。2025/04/04
pushuca
4
翻って、私たちは何と下駄を履いている存在なのだろうか!2025/09/06
jam
1
学術書と思って身構えていたが、結構読みやすかった。フェミニズムからも周縁化され、無視されてきた部落女性に焦点を当てた本。部落解放運動は男性中心の運動であり、そこでも部落女性への視点は少なかった。マジョリティー女性によるフェミニズムは、女性同士の共通点にスポットを当て、女性同士の環境の違いには目を向けなかった。重い指摘だと思う。インターセクショナリティが言われる中でも見落とされたきた、ないものとされてきた人がいる。2025/06/09
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