内容説明
戦争を経験し、男性がほとんどだった頃の出版界に飛び込み、半世紀以上も翻訳してきた女性たちがいる。児童書から文学、ミステリまで、読み継がれる数々の名訳を残す中村妙子、深町眞理子、小尾芙佐、松岡享子―丁寧なインタビューをもとに4人の翻訳家の人生をつづった、「“不実な美女”たち」(光文社WEB)待望の書籍化!単行本への書き下ろしとして、フェミニズム翻訳に力をつくした、加地永都子、寺崎あきこ、大島かおりの章をあらたに収録。
目次
第1部 不実な美女たち―女性翻訳家の軌跡(中村妙子「クリスティー、ナルニア国、ピルチャー 子どもはさまざま、本もいろいろな種類があったほうがいい」;深町眞理子「キング、アンネの日記、シャーロック・ホームズ 英米の小説の翻訳なんかやってます」;小尾美佐「アシモフ、アルジャーノンに花束を、エリオット 異なる文化のしみついた言葉をおきかえていく」;松岡享子「ヘンリーくん、パディントン、ブルーナ お話も翻訳も、子どもが喜ぶと、もっと喜ばせたくなる」)
第2部 ひるがえりひるがえす女たち(女たちが翻訳するまでの前史;私が出会った翻訳者の思い出)
著者等紹介
大橋由香子[オオハシユカコ]
1959年東京生まれ。フリーライター・編集者、非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
24
深町眞理子さん!小尾芙佐さん!幼い頃から手に取る本にあった名前。その方々の人生を追ったインタビューというだけでも面白いのに、同時に昭和という時代に職業婦人として生きた女性たちの物語でもあって、とても興味深く読みました。自らの能力で仕事と評価を得てきた先輩たち。尊敬します。2025/05/14
チェアー
11
出版も翻訳も男の世界だった。男性からの差別についてはだれも多くを語らなかったが、きっと悔しいこと、理不尽なことはあっただろう。男社会の中でいいように使われてただろう。彼女たちはそれをチャンスとしてとらえ、男と並び、抜いた。 翻訳者の男女格差がその後どう縮まっていったのか(縮小されていないのか)、草分けとなった人々を後に続いた人はどう見ていたのか、などの話を聞いてみたい。 2025/01/30
Inzaghico (Etsuko Oshita)
10
ファンである深町眞理子さん、小尾芙佐さんの来し方行く末が読めて嬉しい。深町さんは今まで写真を見たことがなく、どんな方なんだろうと思っていたら、昔の写真ではあるが掲載されていた。深町さんの章では、原文の意図を伝えるためにどこまで踏み込むか、というくだりが印象に残る。自信をもって選んだ言葉なら、多少盛ってもいいんだな(わたしの場合はそれが失敗して大やけどすることがあったりもする)。「英米の翻訳『なんか』やってます」に韜晦を見る。2024/12/07
joyjoy
9
中村妙子さんについて読みたくて手にとったが、他の方々のお話もどれも興味深く、大満足の一冊だった。翻訳ものを翻訳ものとも意識しないで当然のように日本語で読める幸せをあらためて感じた。翻訳に携わる方々に感謝。ミステリやSFはあまり読んでこなかったので、深町さん、小尾さんのお名前とは縁遠かったのだが、アンネの日記!、ジェイン・エアの新訳!と、気づかぬうちに出会っていたことも分かり、嬉しかった。書棚に積読中のピルチャー作品など、本書での翻訳者のエピソードも思い出しつつ読んでいきたい。2025/04/30
Narumi
9
元は光文社のサイトに掲載されていた、女性翻訳者へのインタビュー集。本で読めてうれしい。翻訳者がほぼ男性だった時代に翻訳の仕事を始められた人々です。大きく取り上げられているのは中村妙子、深町眞理子、小尾芙佐、松岡享子の各氏で、自分が名前になじみがあるのは深町氏と小尾氏です。しかし深町さんはキング、小尾さんはル=グインという印象があったのに、キングの言及はなしで、小尾さんもミステリー志望でSFは無理やりだったと書かれていてややショック。2025/03/26
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